第32話

森の奥に進んでいくと、ダンジョンの壁が見えてきた。

角の部分だけ森になっていたようで、そこは一部開けており、泉が湧いていた。

(ふむ・・・ここがダンジョンの壁かな?)

「みんな、あの泉の先にダンジョンの壁がある。」

「じゃあ、あそこまでいけばいいんだね!」

5人は泉に向かって走り出した。

「みんな、ちょっと待て!」

「どうしたの?」

「モンスターがいないとも限らないから、慎重に進もう。」

5人は頷き合い、ゆっくりと泉に近づいていくとリナの【探知】スキルに反応があった。

『ヨウイチくん、この先の泉にモンスターがいるみたい!』

『戦闘準備!ゆっくりと泉に近づくぞ!泉の中を覗き込まないように!』

『了解!』

ゆっくりと泉に近づき、俺は慎重に覗き込んだ。

泉は透き通るような透明で神秘的な雰囲気を漂わせていた。

(ん?モンスターはどこにいるんだ・・・?)

『リナ、本当に【探知】スキルにモンスター反応があるんだよな?どこにもモンスターの姿が見えないぞ?』

『うん、泉の中にモンスター反応があるよ?』

(どういうことだ?泉は透き通って見えるから、モンスターがいればわかるはずだが・・・)

『どうなっているかわからんな・・・みんなも見てくれ。』

5人が泉に近づき覗き込む。

『本当だ・・・綺麗で見やすいけど、モンスターはいないね・・・』

『まぁいい、ちょっと泉から離れて休憩でもするか・・・』

『はーい、じゃあ休憩の準備するね!』

俺たちは泉から少し離れ、休憩をすることにした。

「ヨウイチくん、この泉は綺麗だけど、モンスターがいないね・・・」

「あぁ・・・でも、リナが探知スキルでモンスターの存在を確認しているから不思議だよな。」

5人は不思議そうな表情をしていたが、特に何も言ってこなかったためそのままにしておいた。

(さて・・・どうしたものかな・・・)

俺はアイテムボックスの中身を確認した。

(ふむ・・・食料はとりあえず、こんなものでいいか・・・)

休憩ついでに食事の準備も進めることにした。

「みんな、食事の準備をするから少し待ってくれ。あと、一人手伝って。」

俺はアイテムボックスからドロップアイテムのオーク肉とパンを取り出し、オーク肉を焼き始めた。

食事の手伝いはユイが担当することになり、他の4人は周囲を警戒しながら休憩していた。

食事の準備を進めていると、足元に小さな気配があり視線を落とした。

そこには小さなスライムがモゾモゾしていた。

(ん?これはスライムか・・・?初めて見たな・・・鑑定!)


----------------------------------

【名前】なし

【種族】スライム【年齢】5歳

【レベル】10/100

【職業】 なし

【状態】良好

身体能力

【HP】140/140

【MP】95/95

【攻撃】55

【防御】110

【魔攻】50

【魔防】110

【敏捷】50

スキル

【溶解】【分裂】

----------------------------------


(なるほど、弱いな・・・)

俺はアイテムボックスからパンを取り出し、ちぎってスライムにあげた。

すると、スライムは嬉しそうに跳ねながらパンを溶かし始めた。

(ふむ・・・モンスターも可愛いところもあるんだな・・・)

「ユイ!ちょっと来てくれ!」

ユイを呼ぶとすぐに駆け寄ってきた。

「どうしたの?」

「スライムがいたから、パンをあげてみた。」

「え?スライムってモンスターだよね?」

「あぁ、そうだが・・・なんか可愛くないか?」

「うん、可愛いね!私もパンあげてみようかな?」

ユイは俺が持っていたパンを手渡されると、スライムにパンをちぎってあげた。

スライムは嬉しそうに飛び跳ね、パンを溶かして食べていた。

ユイは楽しそうにパンをあげており、スライムのコロコロした可愛さに魅了されているようだった。

「ユイ、そろそろ食事の準備を手伝ってくれ。」

「うん!わかった!あ、でもちょっと待って。」

『みんな、ちょっとこっちに来てみて!ゆっくりね!』

『んー?なあに?』

4人はゆっくりとこちらに近づいてきた。

「スライムだよ。可愛いでしょ!」

「え?これがスライムなんだ!コロコロしていて可愛い!!」

「私、食事の準備があるから、4人でこのパンをあげておいて~。」

「はーい。」

ユイは4人にパンを渡し、俺と食事の準備を進めた。

しばらくして・・・

「みんな、そろそろ食事ができるから手伝ってくれ。」

「はーい!」

4人はスライムにあげるのを一旦止め、食事の配膳を行う。

「リナちゃん、スライムってモンスターだけど、可愛いね!」

「うん、そうだね!」

「なんか癒されるよね~」

5人は楽しそうに会話していた。

配膳も終わり食事をしていると、スライムがまた俺の足元でモゾモゾしていた。

「ん?なんだ、パンだけじゃ足りなかったか?」

俺の言葉に反応したのかは分からないが、ぴょんぴょん跳ね始めた。

俺は仕方なく、オーク肉の一部を足元に落とし、スライムに与えた。

「よく食べろよ。」

スライムはオーク肉を取り込むとゆっくりと溶かし始める。

(パンとオーク肉だと溶かすスピードが変わるのか・・・?不思議だな・・・)

食事が終わり、休憩していると・・・

「みんな、【探知】スキルが反応した!モンスターが近づいてくるよ!」

リナの言葉に反応し、俺たちは武器を構えた。

(ん?これはオークか?数は6体いるな・・・)

『今回はただのオークだ!ただし、6体いるから気をつけろ!1匹ずつ確実に!』

『『『『『了解!』』』』』

オークが泉に近づいてきたため、5人は戦闘態勢に入った。

(さて・・・どうなるかな・・・)

5人はオークに向かって走り出した。

俺は遊撃として回り込もうとしているオークを倒し始めた。

オークを3匹倒した頃、5人も残りの3匹を倒せたようだ。

「みんな、お疲れ様!」

「うん!オークも倒せたよ!」

「あぁ、みんなお疲れ様。」

5人はハイタッチしながら喜んでいた。

(ふむ・・・やっぱり5人とも強くなってるよな。)

ドロップアイテムを拾い集めながら、皆が強くなっていることに関心した。

休憩場所まで戻ると、そこにはまだスライムがいるのを確認した。

(リナの【探知】スキルはオークにしっかり反応していたな・・・もしかして・・・)

「リナ、ちょっといいか?」

「ん?何かな?」

「このスライムって【探知】スキルに反応するか?」

「ちょっと待ってね・・・うん、反応するね。」

「なるほど・・・」

「それがどうしたの?」

「いや、考えが正しければ・・・」

泉に近づき、以前討伐し解体前のオークの亡骸を泉に落とした。

「え?ヨウイチくん、何してるの!?」

突然の行動にリナが困惑していると、他の4人も集まってきた。

「まぁ、見てなって・・・ほら、オークの死骸から泡が立ち始めている。」

「ほんとだ・・・え?ってことはこの泉ってもしかして・・・」

「あぁ、ここはスライムの住処みたいだな。」

「あ~だからモンスターの反応しているけど姿が見えなくて、溶解があるから泉にゴミがなく綺麗なのかぁ。」

「あぁ、そうみたいだな。」

5人は泉を覗き込みながら見ており、俺は足元のスライムと戯れていた。

(ふむ・・・やはり、スライムは可愛いな・・・)

(ピコーン!特定の条件を満たした為、スキルと称号を獲得しました!)

「は・・・?」

突然聞こえた声に驚き、周囲を見渡した。

「ん?どうしたの?」

「いや・・・今、何かスキルと称号を獲得したって・・・」

「「「「「え?」」」」」

(鑑定!)


----------------------------------

【名前】佐藤洋一(ヨウイチ)

【種族】人族 【年齢】17歳

【レベル】34/100

【職業】鑑定士 冒険者:Cランク

【状態】良好

身体能力

【HP】1060/1060 → 1090/1090

【MP】1060/1060 → 1090/1090

【攻撃】530+ 106 → 545+ 109

【防御】530→ 545

【魔攻】530→ 545

【魔防】530→ 545

【敏捷】530+ 106 → 545+ 109

スキル

【鑑定(神)】▼

【アイテムボックス(神)】▼

【テイム(スライム)(0/1)】▼

【剣術】▼ 【短剣術】▼

【槍術】▼ 【棒術】▼

【盾術】▼ 【弓術】▼

【怪力】▼ 【俊敏】▼

【回復魔法】▼【算術】▼

【情報分析】▼【幸運】▼

【繁殖】▼(現在OFF状態)

<使用不可>

【拳術(80%)】【火魔法(70%)】

【水魔法(60%)】【頑丈(10%)】

【統率(20%)】【嗅覚(70%)】

【回避(10%)】

称号

【ゴブリンの宿敵】▼ 【チョロい男】▼

【スライムの友】▼

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「・・・スキルに【テイム(スライム)】、称号に【スライムの友】が生えてる・・・」

「「「「「えええぇぇぇ!?」」」」」


----------------------------------

【スキル詳細】

・テイム(スライム):スライムのみテイム可能。特殊スキル。称号【スライムの友】を獲得すると取得可能。

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----------------------------------

【称号詳細】

・スライムの友:スライムと一定の友好を得た上で本人のスライムへの好意が高いと獲得。

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「なんなんだ、これは・・・」

俺は頭を抱え、困惑した。

そんな時、女子5人は集まってこそこそしていた。

「(やっぱりヨウイチくんって・・・)」

「(うん、なんか運がいいというかなんというか・・・凄いよね。)」

「(やっぱり付いてきて正解だったね。)」

「(ホント、そう思う。あのまま放置されていたら、ここまでレベル上がらなかっただろうし、ヤバかったかも。)」

「(よし、みんな。頑張ってヨウイチくんを落とそう!)」

「「「「(おぉー!!)」」」」

「おーい、みんな、何をしているんだ?」

「ううん?何でもないよ?」

何やらすごい誤魔化された感じがしたが、そんなこともあるかと気にしなかった。

(それより、【テイム(スライム)】か・・・)

「ねぇ、俺と一緒に来るかい?」

足元にいたスライムに問いかけると、肯定したかのようにぴょんぴょん跳ね始める。

すると、不思議な感覚になり、このスライムと一体になったような、意思疎通したような感覚を覚えた。

「よろしくな。」

スライムは、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねていた。


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