第30話

ヨウイチがサヤカと買い物デートをしていた頃、王城では・・・

ヨウイチと決闘をした3馬鹿が治療院から帰ってきていた。

「あぁ~いてぇ~。治療してもらったはずなのに・・・あぁ、くそっ!!」

「あの野郎・・・覚えてろよ!」

3馬鹿はヨウイチにやられた傷の痛みで唸っていた。

(くそっ!あいつ・・・まじで強くなっているじゃねぇか・・・)

「・・・なぁ、お主ら。」

突然3人に声がかけられた。

3人が声のした方を見るとそこには国王がいた。

「な!?へ、陛下!?」

3人は慌てて跪くが、国王はそれを制した。

「よい、楽にせよ。」

国王がそう言うと3人は立ち上がった。

(一体何の用だ?)

3人がそう思っていると、国王が口を開いた。

「お主たち・・・冒険者ギルドマスターから伝言があったが、ギルドで何かしたのか?」

「・・・え?」

(なぜ陛下がそれを知っているんだ?)

3人は驚きを隠せなかった。

「ふむ、その様子だと何かしたようだな。」

国王は3人の様子から察したようだ。

(やばい・・・これはまずいぞ・・・)

3人は冷や汗をかいていた。

「それで、何をした?」

「・・・そ、それは」

ヨウイチと決闘をしたとは口が裂けても言えないので、3人は黙り込んだ。

そんな様子を見て国王は溜息をついた。

「はぁ・・・答えないのだな。」

(くっ!)

3人は心の中で舌打ちをした。

「まぁ、よい・・・冒険者ギルドマスターが怒っておったぞ?ギルドで騒ぎを起こすなとな・・・」

「・・・はい、申し訳ありませんでした。」

3人は頭を下げたまま答えた。

「もうよい、下がれ!」

国王はそう言うと3人を追い払った。

3人が去った後、宰相が国王の元に来て3人のことを話した。

「陛下、よろしいのですか?」

「・・・何がだ?」

「3人のことですよ。どこから話を聞いたかわかりませんが、ダンジョンが発見されたことを聞いて、訓練を抜け出してギルドに向かったそうですよ。」

(あの馬鹿どもめ・・・)

宰相は心の中で毒づいた。

「ふむ・・・」

国王は顎に手を当てて考え込んでいる。

(まぁ、確かに冒険者ギルドで騒ぎを起こしたのはまずいな・・・)

国王と宰相は3人が訓練をサボったことをどうするか話し合っていた。

「あやつら3人だけは王城の掃除する期間を追加だな・・・」

「・・・そうですね。」

宰相は苦笑いを浮かべた。

(はぁ、陛下も随分とお怒りのようだ・・・特にヨウイチ殿と決闘をしたことにか。)

3馬鹿が訓練を抜け出して、ヨウイチと決闘したことが国王に知られてしまったので、3人はしばらくの間王城の掃除をする羽目になったようだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


また、冒険者ギルドでは・・・

「はぁ・・・」

受付嬢のメイが溜息をついていた。

メイはヨウイチと3馬鹿の決闘の後、ギルドマスターに呼びだされたのだ。

(何かやらかしたかな・・・)

そんなことを考えていると、ギルドマスターがやってきたようだ。

「おい!ちょっと来てくれ!」

「あ、はい!」

メイは慌てて席を立ち、ギルドマスタールームに来た。

「あの・・・ギルドマスター?何か御用でしょうか?」

メイはビクビクしながら尋ねた。

(私、何かしたかな・・・)

「・・・ああ、ヨウイチのことだ。」

(え!?なんでここで彼の名前が出てくるの!?)

メイは困惑したが、ギルドマスターの話に耳を傾けた。

「俺がヨウイチと決闘をした3人を治療院に連れて行ったのは知っているな?」

「はい・・・」

「その後に王城に寄って、あの3人がやらかしたことを伝言で伝えておいたんだ。」

「はぁ・・・」

「その後、宰相のカイから返信の連絡があったんだがな・・・ヨウイチを臨時の講師として招きたいと考えているみたいだ。」

「・・・え!?」

(それ、どういうこと!?)

メイは驚きを隠せなかった。

(なんで宰相様がヨウイチさんのことを?それに講師って・・・)

「なんでも、今回の決闘で王城にいる召喚者たちの弱さが浮き彫りになり、追放した者たちのほうが強いということがわかってしまった。特にヨウイチなんかはダンジョン発見の功労者でもあるわけだし、国王とも面識があるのもあって、目をつけられたんだな。」

「・・・」

(確かに、ヨウイチさんのレベルの上がり方は異常だ・・・)

メイは不安そうな表情を浮かべていた。

「まぁ、国王が何を考えているかわからんがな・・・とりあえず、召喚者の中で一番の成長株が追放したヨウイチで、そのレベルのあげ方だとかを召喚者に教えるのは同じ召喚者であるヨウイチがいいと判断したのだろう。」

(確かに、それはあるかもしれない・・・でも・・・)

メイはヨウイチが講師として呼ばれるのを不安に思っていた。

(もし、他の召喚者たちがあの3人みたいに暴れたり暴言を吐いたら・・・)

そんなことを考えているとギルドマスターが口を開いた。

「まぁ、ヨウイチなら大丈夫だろ!最終的にはヨウイチに判断してもらうことだ。」

「そうですけど・・・」

「ヨウイチがギルドに来たら、一度マスタールームに来るように伝えてくれ。」

「わかりました。一応、予定は聞いていますが、明日からはアガルタ王都ダンジョン第3層の攻略を始めるみたいですよ。」

「あー・・・それがあったか・・・ダンジョン攻略は進めてもらわないと旨味がないな・・・講師の件もそれで断られるかもな・・・」

(確かに、ダンジョン攻略を優先させるよね・・・)

「まぁ、ヨウイチが断ったら断ったで何か考えるしかないか・・・まぁとりあえず、ヨウイチを呼んでおいてくれ。」

「わかりました。では失礼しますね。」

メイはギルドマスタールームを後にした。

(はぁ~これは大変なことになりそう・・・)

メイはこれから起こるであろう騒動に頭を抱えたのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る