第28話


「ヨウイチ様、お帰りなさいませ。」

家に戻ると、メイドさんが出迎えてくれた。

「ただいま・・・あ、話したいことがあるから他の5人を集めてくれませんか?」

「かしこまりました。」

メイドさんは頭を下げて、5人を呼びに行った。

5人がリビングに集まるのを待っている間、俺はソファーに座って寛いでいた。

しばらくすると、5人がリビングに集まったのでギルドでの出来事を共有するために話をした。

「というわけで、3馬鹿と決闘することになったんだけど・・・」

俺が話終わると、5人は呆れていた。

(はぁ・・・やっぱり呆れるか・・・)

5人に呆れられながらも、俺は話を続けた。

「それで、あの程度の強さで王城に残っているクラスメイトは大丈夫なのか?」

「ん〜どうなんだろう・・・?実は私たちも追放される前は既にみんなとは一緒にいなかったんだよね。」

「ん?どういう事?」

「私たちが弱いってわかった時点で、他の子たちとは離されちゃったんだ。」

「なるほど・・・」

「ヨウイチ様、皆様がわからないご様子なので私がご説明しますがよろしいでしょうか?」

メイドさんの1人が王城で働いていた頃の様子を話してくれた。

「私が王城で働いていた頃は、ヨウイチ様がおっしゃったようにレベルが低いガk・・・方々ばかりでした。まぁ、最初の1か月は生活に慣れてもらうために、この国の勉強ですとかお金の相場等の常識的な事を教えていたのですが。その後は騎士団と訓練を行い、3か月後あたりからモンスター討伐にも行くようになっていました。」

メイドさんは当時を思い出すように話を続ける。

「ガk・・・ゴホン、勇者様方は力に過信し、自分たちよりレベルの低い魔物としか戦っていないようでした。そのため実戦経験が少なく実践慣れしていない方が多かったようです。」

(なるほど・・・だからあの程度の強さだったのか・・・というか、メイドさん明らかにガキって言ってるよね・・・)

メイドさんの言葉を聞いて俺は納得したと同時にあいつらが王城でメイドさんに何をしたのか凄い気になってしまった・・・

「ただ、レベルが低いとはいえ、魔物は魔物です。王城にいる一部の勇者様方には荷が重かったと聞きます。」

メイドさんは当時のことを思い出したのか悲しそうな表情を浮かべていた。

「なるほどな・・・ありがとう・・・確かに俺たち召喚者は戦いのない平和な国で過ごしていたからね・・・急にモンスターと戦えと言われてもできないか・・・」

俺の言葉にメイドさんは驚いている。

「勇者様方からはそのような話を聞いておりますが・・・では何故、ヨウイチ様は既にここまでレベルを上げれているのでしょうか?」

「あ~・・・まぁ、そうたいした話ではないのだけど、まず、あっちの世界で武術を教えてもらっていたんだ。その稽古の一環で山籠もりがあって、イノシシだとか戦ったことがあったので、その経験が生きているのだと思う。」

「まるほど・・・」

「俺って幼い顔をしているから、そのことで色々とあってね・・・武術を習い始めたんだ。」

(あぁ・・・ヨウイチ様が儚げな顔をされていらっしゃる・・・それもまたいい!)

メイドさんは何やら興奮している様子だった。

「まぁ、そんな感じで俺は問題なくレベルを上げていったんだ。」

(とりあえず、俺の話はこんなところかな・・・ん?)

メイドさんを見ると何故か恍惚とした表情を浮かべていた。

「そういえば、ギルドマスターに3馬鹿の治療をお願いしたんだけど・・・」

「え、ヨウイチくん、そこまでの傷を負わせたの?」

「いや、かなり手加減はしたんだけどね、刃が潰してあるといっても鉄の塊で殴るわけだから、どうしてもね。まぁ向こうも俺を痛めつけて従わせようとしていたから、お互い様だよね。」

「うわぁ・・・」

3馬鹿の状態を聞いた皆は、全員が引いていた。

「とりあえず、ギルドマスターにお願いしたから大丈夫だと思うよ。ただ、その後は王城に伝言と共に引き渡すって言っていたから、罰が増えるんじゃないかな?」

俺がそう言うと、みんな安心してくれたようだ。

「あ、そうだ!あと伝え忘れていたのだけど、3馬鹿はまだ君たちのことを探しているみたいだったよ。俺からは何も言っていないけど、気を付けてね。」

「え!まだ探していたんだ・・・」

「まぁ、あっちが諦めるまで無視しておけばいいよ。」

「そうだね・・・」

みんなは嫌そうな顔をしている。

「そういえばさ、ヨウイチくんってどうやってレベルを上げたの?私たちも今はレベルを上げれているけど、ヨウイチ君は初めは一人だったでしょ?いくら武術を習っていても一人では厳しいんじゃないかな?」

「あ~、それね。俺の場合は運がよかったってのもあるけど・・・初めはお金はないから武器も買えなかったし・・・」

(本当に運がよかったな・・・リンさんに出会ったのも運だと思うし。)

「お金を得るために初めは薬草採取をしたんだけど、薬草の中にマジックヒール草ってのがあってね、金貨1枚になったから色々と買えるようになったんだよ。それで武器を買ってゴブリンの依頼を毎日受けていたらボブゴブリンも倒せるようになったんだ。」

「え!マジックヒール草って金貨1枚もするの!?」

「うん。そうだね、採取できるのは珍しいって聞いたよ。」

(メイさんの話でマジックヒール草は採れるとこが限定していて、この辺りではなかなか見つからないって聞いただけだけど・・・)

「ん?でもさ、ゴブリン討伐なら私たちも毎日しているけど、レベルの上がり方が全然違うよね?」

サヤカが疑問に思ったことを聞いてきた。

「そうそう、私もそれが気になっていたんだよね!」

「多分だけど、ソロだったからじゃないかな?同じ数を倒すのであれば、一人に経験値が集まるし。あとはリンさんの存在が大きいね。オークを倒すのも手伝ってもらったりしたんだよな。」

「なるほど・・・」

「オークは良かったなぁ・・・ちゃんと解体すると豚肉みたいになるから、買取金額も高かったんだよね。」

「え!そうなの!?」

「そうなんだよ。まぁ、オークの集落を潰しちゃったから、最近は見かけなくなったんだけどね・・・」

「ヨウイチくんって何気に運がいいよねぇ・・・」

それからはみんなと談笑してその日は終わりを迎えた。


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