第15話

(なるほど、そういうことか・・・)

リンさんが王城で何をしていたかを理解した。

(でも、王妃様まで協力してくれるなんてな・・・というか、リンさんの伝手ってのが恐ろしいな・・・)

「よし、みんな!今日はゴブリン討伐はやめて、宿に帰って作戦を練ろう!」

クラスメイトの女子たちは嬉しそうな表情で返事をした。

「うん!」

(まぁ、とりあえずはこれでいいか・・・)

俺たちは宿に戻り、作戦会議を始めた。

翌日、俺は冒険者ギルドに来てギルドマスタールームに案内してもらった。

「ギルドマスター、昨日言っていた異世界人の件ですが・・・リンさんが協力者を見つけてきたらしいです。」

「ほう・・・それはありがたいな!」

(あれ?あまり驚いていない??)

疑問に思いながらも話を続けた。

「それでですね、その協力者と一度王城で会議をし、今後の方針を決めるようにするみたいなのですが・・・」

「ふむ・・・、わかった。では、王城からの使者が来るまでは待機だな。」

(あれ?なんかあっさりしているな?)

俺はギルドマスターに聞いてみた。

「あの・・・もっと驚かないんですか?」

すると、ギルドマスターは少し笑いながら答えた。

「あぁ、驚いているよ!」

(絶対嘘だ!!)

そんなやり取りをしていると、扉がノックされ女性の声が聞こえてきた。

コンコン・・・ガチャ・・・

「失礼します。」

(え?リンさん?)

俺が驚いていると、リンさんは笑顔で話しかけてきた。

「ヨウイチ、王城から使者が来たわよ!」

(いや・・・早すぎだろ!)

そんなやり取りをしているとギルドマスターが答えた。

「わかった、通してくれ!」

すると、扉が開き1人の男性が入ってきた。

その男性は、白髪にメガネをかけており、いかにも賢そうな雰囲気を出していた。

「はじめまして、私はこの国の宰相を務めております、カイと申します。」

(え?この人が宰相??)

俺はギルドマスターに小声で話しかけた。

「あの・・・ギルドマスター・・・」

「ん?どうした?」

「なんで、この方がここに?」

すると、ギルドマスターは少し笑いながら答えた。

「あぁ、それはな・・・リンの王城の伝手経由で来てもらったのだ!」

(え?リンさん??)

俺はリンさんに視線を向けた。

「ふふっ。私に任せて!!」

そんなやり取りをしていると、宰相さんが話しかけてきた。

「ヨウイチ殿ですね?」

「あ、はい・・・」

俺が返事をすると、宰相さんは話し始めた。

「では早速ですが本題に入りましょう」

「あ、はい。お願いします!」

「まず最初に確認しますが、あなた方6人はこちらで暮らすことを希望されているのですね?」

(え?なんでそんなことを聞くんだ??)

俺が不思議に思っているとギルドマスターが答えた。

「あぁ、その通りだ!」

すると、宰相さんが少し微笑みながら答えた。

「わかりました。では、今後について王城で話し合いましょう。」

(え?それだけ??)

そんなやり取りをしていると、ギルドマスターが話しかけてきた。

「よし、じゃあ、王城に行くか!」

(あれ?なんかすごいあっさりだな・・・)

俺は戸惑いながらも、ギルドマスターの後をついて行った。

こうして俺たちは馬車に乗り、王城に向かった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


王城に着くと、宰相さんが話しかけてきた。

「では、ヨウイチ殿、国王がお待ちですのでご案内します。」

(え?国王???)

そんなやり取りをしていると、俺はギルドマスターに声をかけられた。

「じゃあ、俺たちは結果が分かり次第、ギルドに戻っているから行ってこい!」

(あれ?ギルドマスターは行かないのか・・・)

疑問に思いながらも了承した。

「わかりました。行ってきます!!」

そして、謁見の間の扉が開き、先に国王様と隣に王妃様らしき人がいるのが見えた。

俺は緊張しながらも、国王様の元に向かった。

「来たか・・・まずは自己紹介からしよう。私はこの国、アガルタ王国国王、バルス・フォン・アガルタである。」

「私はアガルタ王国王妃のエリザ・フォン・アガルタです。よろしくね!」

(え?なんか、王妃様はすごいフレンドリーだな・・・)

「この度は、謁見の申入れを了承していただきありがとうございます。私は先日召喚されました佐藤洋一と申します。」

国王様はぶすっとした様子で・・・

「知っている。召喚当日に王城から追放した者だな?」

(え?なんか、国王様の機嫌が悪いな・・・)

「はい・・・」

「まぁまぁ!そんな態度じゃダメでしょ!」

(やっぱり王妃様はフレンドリーだな・・・)

すると、王妃様は俺に話しかけてきた。

「ところで、あなた、なんで追放されたの?」

(え?それ聞いちゃう??)

「えっと・・・ステータスが低く、スキルも普通だったからでしょうか・・・?私もよくわからないまま追放されてしまったので、なんとも・・・」

(あれ?なんか、王妃様の顔が怖くなったような・・・)

「はぁ・・・、情けないわね。」

(え?なんか、王妃様からすごい圧を感じるんだけど・・・一体はどうしたんだ??)

すると、国王様が慌てて話し始めた。

「まぁ、いい。今後について話し合いを始める!カイ、入ってこい!」

すると、宰相さんが入ってきた。

「失礼します。」

(え?宰相さん?)

すると、国王様が話し始めた。

「では、これからのことについてだが・・・まずは王城にいる男子たちを調査し罰を与える!」

(え?罰を与える?)

「あの・・・罰ってどうするのですか?」

「男子たちは1年間王城の掃除係だ!そして、追放した女子の5人だが・・・ヨウイチに預ける!」

(あれ?なんかまた機嫌が悪くなってないか?)

俺は不思議に思いながらも質問した。

「えっと・・・なぜ私に?」

すると、王妃様が答えてくれた。

「それは、あなたがその子たちの面倒を見れると判断したからよ!」

「うむ、聞く話によると、冒険者として既にC級になっているらしいじゃないか。」

(え?ギルドマスターが話したのか??)

驚いていると、宰相さんが説明してくれた。

「実は、冒険者ギルドのギルドマスターとは知り合いでして・・・その話を聞いてヨウイチ殿が優秀な冒険者だと判断させていただきました。」

(なるほど・・・)

「あなた、他に言うことがあるのではないかしら?」

(ん?他に言うこと??うわ・・・王妃様からものすごい威圧が飛んでいるような・・・)

「うむ・・・ヨウイチ・・・すまなかった!見知らぬ土地に勝手に召喚した上に、何も持たせずに放り出してしまった。」

国王様は深々と頭を下げた。

(え?国王様が頭を下げてる?)

「また、追放した他の者たちにも申し訳なかったと言っておいてくれ・・・」

「あ、頭を上げてください!私は大丈夫ですから!」

(というか、王妃様はなんであんなに機嫌が悪いんだ??)

「ヨウイチさん、私は召喚され追放された人がいたことは知らなかったのよ・・・魔王と戦う為とはいえ、こんな子供たちを勝手に召喚し、放り出すなんて国王のすることじゃないわ。ねぇ?あなた?」

「うむ・・・その通りだ・・・」

(え?これって王妃様が怒っていたのか??)

「だから、お友達のリンに聞いたときはびっくりしてしまって。とことんこの人を追及したのよ。」

「えっと・・・リンさんは、このことを知っているのですか?」

すると、王妃様が答えてくれた。

「えぇ、もちろんよ!」

(あれ?なんか王妃様の機嫌が直ったような・・・)

「わかりました・・・。では、これからのことなのですが・・・」

国王様は申し訳なさそうな表情で話しかけてきた。

「うむ・・・。ヨウイチ、これからどうするのか決めてくれ・・・」

「え?」

(それって・・・俺が決めるのか??)

「すでに冒険者ランクC級と聞いているのでな、独り立ちできると判断した上で、君たちの行動には介入しないと決めている。」

国王様の言葉を聞いて、俺は考えた。

(うーん・・・どうしよう??)

「もちろん、今までの無礼な行動に対する詫びも出そう。」

(え?お詫び??)

「えっと・・・、では、住むところとお金が欲しいです。」

「うむ、わかった!では、この度の詫びとして住む場所と各々に白金貨1枚を提供しよう!」

(え?そんな大金を簡単にくれるのか??)

「あの・・・お金はありがたいのですが、住む場所は・・・」

すると王妃様が答えてくれた。

「それなら心配しないで!王都内にあなたの住む場所を用意します。」

「え?王都内にですか??」

(なんか、至れり尽くせりだな・・・)

すると、国王様が話しかけてきた。

「うむ!では、お金は後日ギルドの口座経由で渡すとして・・・住む場所についてだが・・・」

(ん?何かあるのか??)

「あの・・・どこかいい場所がありますか?」

すると、王妃様が提案してくれた。

「それなら、私の屋敷に住みなさい!」

(え?王妃様の屋敷に?)

「えっと・・・ちょっとそれは・・・」

国王様が慌てて話し始めた。

「いや、それはダメだ!!」

宰相さんが話しかけてきた。

「では、私が用意した家にしましょう。」

「あの・・・それは、ありがとうございます。」

(既に用意してあったのか・・・?)

そんなことを考えていると、国王様が話しかけてきた。

「では、その家にはメイドを2人派遣しよう!給金は国から出すので、安心してくれ。」

(え?メイド??)

「あら、いいわね!!」

(あれ?また機嫌が良くなったような・・・)

「では、ヨウイチ殿、これから住む場所に案内します。今日のことはギルドマスターにも伝えておきます。」

(え?宰相さんはついてくるのか?)

「あ、はい!よろしくお願いいたします!では、国王様、王妃様、ありがとうございました。失礼します。」

こうして俺は謁見の間を後にし、住む場所に向かうことになった。

王城を出て馬車で30分ほど移動したところに屋敷があった。

(うわ・・・めちゃくちゃデカいな・・・)

俺は驚きながらも中に入った。すると、メイドさんが出迎えてくれた。

「ヨウイチ様、お待ちしておりました。」

(え?待ってた?)

「えっと・・・、これはどういうことでしょうか?」

(なんか、メイドさんが出迎えてくれるのは嬉しいけど・・・)

「ここは元々、没落した伯爵が所有していた屋敷でね、国が買い上げていたのだが、劣化させないためにもメイドに定期的に掃除をしてもらっていたのだよ。」

「なるほど・・・」

(なんか、至れり尽くせりだな・・・ほかのメンバーを呼んでも余裕がありそうだ・・・)

「では、ヨウイチ殿。受け渡しも完了したので、私はこれで失礼しますね。」

「あ、はい!色々ありがとうございました!」

宰相さんを見送ると、メイドさんが話しかけてきた。

「では、さっそくですがお部屋を案内しますね。」

「あ、お願いします。」

そして、俺は部屋に案内され、王城での出来事も終わったのだと感じた。


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