第11話

森の手前まで来ると一旦止まり、受験生10人を2組のパーティに分けた。

「よし!では、パーティ分けを発表する!A班はヨウイチと4人、B班は残りの受験生だ!準備を急げ!」

(え?まじか・・・なんで俺だけ名指しなんだ・・・)

「A班にはリンが、B班にはガインが護衛につくが、基本的に手は出さないので注意しろよ!」

「はい!」

A班の人たちと森に入っていった。

森の中は暗く、月明かりだけが頼りだ。

リンさんは俺たちの後について歩いているが、正直怖い。

(うぇー・・・なんか出そうだな・・・)

そんなことを考えていると、前方から声が聞こえてきた。

「誰だ!」

パーティメンバーは剣を抜き静かに戦闘態勢に入った。

俺も慌ててスティレットを抜いた。

(やばいな・・・俺戦えるのか?)

そんなことを考えていると、前方から更に声が聞こえてきた。

「おい!止まれ!!」

(え?もうバレたの!?早くね?)

緊迫の中、見回り中と思わしき盗賊が一人現れた。

「おい!お前ら、何をしている!!」

A班リーダー(ヨウイチが勝手にそう思ってる)らしき人が返事をした。

「我々は冒険者だ!!盗賊を討伐に来た!!」

(おぉー!すごいな・・・)

「ちっ!面倒だな・・・お前ら、やっちまえ!!」

他の見回りの盗賊が2人ほど現れた。

(まじかよ!!やばいだろ!!)

A班リーダーが指示を出した。

「よし!お前らは後ろの2人を倒せ!!俺とヨウイチさんで前の1人を倒す!!」

(え?大丈夫かな・・・)

そんなことを思っていると、A班の一人が話しかけてきた。

「ヨウイチさん、俺らは盗賊討伐経験者です!安心してください!!」

「わかりました!」

そんなやりとりをしているうちに、前方の盗賊が襲ってきた。

「お前らやっちまえ!!」

A班リーダーが指示を出すと、他の受験生も動き出した。

俺はとりあえず一番近くにいた盗賊にスティレットで切りかかった。

盗賊は持っていた短剣で俺の攻撃を防いだ。

(うぉ!!めっちゃ怖いな・・・)

A班リーダーはその盗賊に切りかかるが躱されてしまう。

ヨウイチは躱した先を把握し、スティレットで首元を刺した。

「ぐぇ!!」

盗賊は倒れ、A班リーダーが話しかけてきた。

「ヨウイチさん、お見事です!」

盗賊の残り2人も受験生3人が無事に倒していた。

ヨウイチは初めて人を殺した感触に戸惑いつつも、なんとか平静を保っていた。

「ヨウイチさん、こいつらのアジトはあっちです!行きましょう!!」

正直、行きたくないがA班リーダーがどんどん進んでいくので、仕方なくついて行くことにした。

しばらく進むと洞窟のような場所が見えてきた。

「ヨウイチさん、ここが盗賊のアジトです!少し隠れて様子を見ましょう。」

「はい!」

A班リーダーの指示に従い、洞窟の陰に隠れた。

その後、B班も合流し、同時に洞窟の中に進むことになった。

洞窟の中に入ると、盗賊が2人立っており、奥には広間があった。

(え?あれって・・・)

A班リーダーが指示を出した。

「よし・・・お前ら!!行くぞ!!」

A班メンバーとB班メンバーで一斉に突撃した。

奥から声が聞こえてきた。

「おい!何事だ!?」

(あ、やばい!!気づかれた!!)

奥にいた盗賊は、襲撃されたことに気づき、さらに奥の方に逃げていった。

「お前ら!このまま追うぞ!!」

(え?まじか・・・)

洞窟の中はかなり広く、分かれ道がいくつもあった。

A班とB班の受験生で別れて進むことになった。

分かれ道では、A班リーダーが指示を出す。

「ヨウイチさん、こっちです!!」

(え?なんでわかるの??)

A班リーダーの指示に従い、どんどん進んでいくと牢屋があった。

(あれって・・・やっぱり!!)

牢屋の中にいた女性が話しかけてきた。

「あのー・・・どうか助けてもらえないでしょうか・・・」

(やっぱり捕まっているよ・・・どうしような・・・)

俺が動揺していると、A班のリーダーが話しかけてきた。

「ヨウイチさん、ここは俺に任せてください!!」

(え?まじか!!)

A班リーダーは牢屋の鍵を剣で切り落とし、女性を救出した。

女性はお礼を言っていた。

(あ!よかった・・・)

洞窟の奥から声が聞こえてきた。

「お前ら!何してる!」

(やべっ・・・やばいぞ!!)

「お前らっ!一旦引くぞ!!」

A班メンバーは捕まっていた女性を連れて洞窟の外まで逃げてきた。

(ふぅ・・・助かった・・・)

洞窟の奥から声が聞こえてきた。

「おい!お前ら逃げたらどうなるかわかってるんだろうな!!」

(やばい!)

「ヨウイチさん、ここは俺が先に行きますから後に続いてください!!」

(え?まじか・・・)

A班リーダーは剣を抜き、盗賊に切りかかった。

しかし、盗賊は剣で防いだ。

「おい!お前ら!!ただで済むと思うなよ!そんなに死にたいのか!!」

A班リーダーは盗賊に切りかかっているが、なかなか当たらないようだ。

(やばいぞ!!俺も助けないと!!)

俺はスティレットを抜き、盗賊に切りかかった。

(あれ?なんかめっちゃ当たるぞ!!)

「ヨウイチさん!ありがとうございます!!」

A班リーダーはお礼を言い、再び盗賊に向かっていき、盗賊の左足を切りつけた。

「くらえ!!」

(おぉー!すげぇ!!)

盗賊がA班リーダーに切りかかった。

(やばいっ!)

俺は咄嗟にスティレットで防いだ。

(あ!やべ・・・手が痺れる・・・)

A班リーダーは驚いていた。

「ヨウイチさん、ありがとうございます!!」

(いやいや、こちらこそ先に行っていただいて助かりました・・・)

残りの盗賊が襲ってきた。

「お前ら!!もう許さん!!」

これにA班全員で盗賊に向かい、こっちに向かってきていた盗賊は全滅させた。

「ふぅ・・・終わったのか・・・」

少し待っていると、B班も無事に出てきて、こちらは盗賊が貯めこんでいたであろう品々を持ってきていた。

「ヨウイチさん、これどうしますか?」

戦利品についてA班リーダーがヨウイチに話しかけてきた。

(え?これって・・・俺が決めるの??)

「えっとー・・・」

(やばい!!何も思いつかないぞ!!)

A班リーダーは話を続けた。

「じゃあ、特にないようであれば、これはギルドに預けておきますね!」

(あ!なるほど・・・そっちの方がいいのか・・・)

B班メンバーも頷いていたので、俺も頷いた。

「わかりました!」

受験生は皆無事で、ヘトヘトになりながらも救護者と共に隣町まで帰ってきた。

(ふぅ・・・疲れたな・・・)

その後、A班リーダーが話しかけてきた。

「ヨウイチさん、今日はありがとうございました!!」

(え?何が??)

A班リーダーは少し興奮しているようだった。

「ヨウイチさんのおかげで、無事に盗賊を討伐することができました!!」

(いやいや・・・俺何もしてないじゃん!ただ指示に従っていただけだよ・・・)

A班のリーダーは興奮しながら話を続けた。

「それに、あの判断力!とても素晴らしかったです!!」

(え?どの??)

「それに、あの盗賊に切りかかった時のヨウイチさんの動き!あれこそ、真の冒険者ですよ!!」

(いや・・・あれはたまたまで・・・)

「それに・・・」

(やばいぞ!!このままだと終わらない気がする・・・)

A班リーダーの猛攻な話に戸惑っていると、B班の受験生が話しかけてきた。

「ヨウイチさん、今日はありがとうございました!!」

「え?何が??」

B班の受験生はお礼を言っていたが、俺は何もしていない。

(いや・・・本当に何もしてないのに・・・)

A班リーダーはまだ興奮していたが、B班メンバーに引きずられて帰っていった。

ヨウイチはA班リーダーの猛攻が終えトボトボ歩いていると、ふと気づいた。

今回の盗賊討伐メンバー全員の名前を知らないことに・・・


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