第7話 それは勢いよく回り出す
『ふふふ、いい感じに動き出したみたいね。なら、そろそろこちらも動かそうかしら。うふふ、楽しんでくれるといいわね』
「うっわぁ~思ったよりグロ! こんなの人に見せられないよね~ふふふ、でも本当に飛び降りるなんてバカだよね~しかもご丁寧に何度も約束を守れと言ってくるなんて。約束なんて知ったこっちゃないし。それに卒業した後の中学のことまで知らないわよ」
自宅に帰ってしばらくしてから、学校の教師から一週間ほど休校になると連絡を受けた政美はどうやってこの一週間を過ごそうかと考えていたら、彼氏であり、一緒に直樹を虐めていた『
「あ、もっし~どうしたの? もう、淋しくなった?」
『バカ! それどころじゃないだろ! 何故、あんなのを流したんだ!』
「え? 何? なんのこと?」
『惚けるなよ! あの映像はお前しか撮ってないだろ! だから、お前以外にネットに流せるわけないだろうが! いいな、お前のせいだからな! 俺は知らないからな!』
「え、ちょ、ちょっと待ってよ。隆一!」
隆一は言いたいことだけ言って、通話を終わらせた。政美は通話が切れたスマホの画面を見ながら、隆一は何を言っているんだろうと首を傾げるが、隆一は肝心のことを何も言わなかったので政美には結局何がネットに流されたのか分からないままだったが、スマホの画面がアプリの通知を知らせるバナーで埋めつくされる。
「え? こんな一杯の通知なんて……どういうことなの?」
政美は通知で埋め尽くされたスマホを手に取ると、その内の一つのアプリを開くと未読のメッセージ件数が三桁に達していた。
「え、なんで……」
不思議に思った政美だったが、さっき隆一が言った「なんでネットに流した!」と言った意味がここにきてなんとなく分かった。
分かったが自分は流していないのだから、何かと勘違いしているのだろうと一つのアプリを開くと『鬼!』『人でなし!』『鬼畜、悪魔だな』と罵詈雑言のオンパレードだった。
「え? どゆこと?」
中には同級生からのメッセージもあり、「あんたのせいで!」と書かれていた。
「え? 私、何もしていないのに……なんで、私が叩かれているの? あれ、これって……」
一つのメッセージに『規律、または法律に反する映像がアップされたので運営の判断で削除しました』と表示されていた。
「え、なんで? 私、何もしてないよ。どういうことなの?」
政美は嫌な予感がして動画投稿サイトの自分のアカウントを使い開こうとしたが、開けなかった。
「え、なんでなの? まさか……私のアカウントを使って……でも、どうやってやったっていうのよ。私のスマホはずっと私の手元にあったのに……」
一体誰が政美のアカウントを乗っ取ったのかと考えていると、またスマホが着信を知らせて来たので、電話を取ると同級生からだった。
「あ、萌美~ちょうどよかった。ねえ、聞いてよ~もう最悪なことがあってさ~『最悪なのはこっちよ!』え?」
『あんた達のせいで私達全員が迷惑しているってことよ!』
「え、ま、待って、ね、待ってよ。隆一も萌美も何を言っているの?」
『はぁ? 何を言っているのって言いたいのはこっちよ! いい? 絶対に許さないからね。あんたもアイツみたいに死んじゃえ!』
「え……萌美? 萌美、ウソでしょ! ねえ、萌美!」
既に通話を切られたスマホを握りしめ、政美は呆然としてしまう。隆一も萌美も私がしたことを許さないと言っているが、政美には何を言っているのかさっぱり分からない。
一つだけ、もしかしたらと言えるのは、スマホの中に入っているあの映像だろうと。
だけど、その映像は誰にも見せたことはないし、どこにもアップロードした覚えもない。だが、隆一はネットに流れていると言っているし、萌美については何に憤慨しているのかが全く分からない。
「どういうことなの?」
政美は一体何が起きているのかが分からず思わず髪を掻き毟るが、そんなことをしても何も思い付かない。そうこうしている内に家の玄関が乱暴に開かれる音がしたので、誰か帰って来たのかと部屋から出て、階下の様子を見ると如何にも機嫌が悪いと分かる父親が乱暴に靴を脱ぎ散らかしリビングへとドスドスと音を立てながら向かうのが分かった。
「お父さんがこんな時間に帰ってくるなんて珍しいわね。あ! ひょっとしてアノ件で傷着いていると思われているのかな。だとしたら、部屋で大人しくしているのがいいわね」
政美はソッと部屋に戻るとベッドに俯せに寝そべると同時に部屋の扉が乱暴に開かれる。
「政美!」
「お父さん、何! ノックくらいしてよ!」
『バシッ!』
「イタッ! 何よ! いくら機嫌が悪いからって娘に当たること無いじゃない!」
「誰のせいでこうなったと思っているんだ!」
『バシッ!』
不機嫌そうな父親がズカズカと部屋に入って来るなり、ベッドの上で寝そべっていた政美を起こすと、その左頬を父親は思いっ切り右手で張ったのだ。
だが、政美はいきなり父親に殴られたとしか思っておらず、殴られたことに文句を言うと父親は更にもう一度政美の頬を張り倒すのだった。
「なんで、私ばかり……」
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