第5話 『死神の御指』
再度ダンジョンを訪れた僕は、第三層を目指して歩いている。
結局、昨日は
流石に第二層の敵も弱すぎるので、第三層へ行ってみようという試みから、僕はずっと探索を続けている。
ダンジョン探索とはロマンだという話もあるが、大半のダンジョンは探索に時間を費やしてしまうので、ロマンをそれほど実感できない。
正直おもんないので早く第三層への道を見つけてしまいたい。
わざわざ探さずとも、他の探索者から情報を貰って次の階層まで進むというケースもあるが、ダンジョン冒険者にとってダンジョンの情報とはとても貴重なものである。
つまりは、ダンジョン冒険者が素直に情報をくれるとも限らないし、くれるとしても過剰に膨大な情報料をふんだくられるだけである。
それで得られるのは、数時間から数十時間かければ見つかる道の情報のみ……絶対に割に合わないし、他のダンジョン冒険者にお金を渡すことも嫌なので、大人しくダンジョンを隈なく探すしかないわけである。
ちなみに、僕は過去に多額の情報料を払って、情報を提供してもらったことがある。
なんだっけ……そうそう、『世界真理発見者』とかいう酔狂な輩の集まりだった。
明らかに信用できなさそうなやつらに情報を求めたことは、今でも後悔していることである。
僕はそんな奴らから情報を買って、結果として情報の全てがただのデタラメだったのである。
そんなこともあってか、僕は他人から情報を買うということを忌避している。
まあ、探索というのがとても辛い作業なのが分かるが――
「ん?もしかしてこれは……。……あった!あったぞ!やっと見つけた!」
――こうやって道を見つけたときの達成感なんかは、買った情報ありきでは味わえない感覚なのだ。
そんなこんなで、僕は第三層への到達に成功する。
とても清々しい気分である。
さて、第三層について、早速やるべきことと言えば――
「これで実験が捗るぜってことで……実験、開始だ!」
――スキルの実験しかないんだよなぁ!
ウキウキの気分で実験の開始を宣言すると、僕は魔物を探しに第三層の深くまで行くのだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ハァ……なんだ、第三層もこんなもんか」
結論から言うと、第三層の魔物も雑魚ばっかりだった。
第二層の魔物じゃできなかった実験を試みようとしても……相手が弱すぎて話にならない。
僕は色々、スキルの実験をして、スキルのことをもっと知りたいのだ。
例えば、一部だけを小さくしながら、同時に一部を大きくできるか……とか。
知れればこの先役に立つかもしれないのに。
そんな僕の気持ちを、魔物が汲み取ってくれるわけではないので、魔物は呆気なく僕のスキルと攻撃の前に散る。
ていうか、鬼人が特別強かったせいで、他の魔物のインパクトが小さく見える。
「またイレギュラーでも発生しないかな~」
なんてありえない妄想だろうか。
発生しえないからこそイレギュラーなのに、それが起こることを願っている時点で大馬鹿である。
まあ、今日はここで引き上げるか……。
明日どうするかは、多分明日の僕が考えてるだろう――
「きゃあああああああ!たしゅけてくださいいいいいい!」
――甲高い、女性の悲鳴が聞こえる。
何かを考えることもなく、体が勝手に声の方向へ向かった。
そうして近づくと……なるほど、これは納得だ。
腰を抜かしている女性、今か今かと押し寄せる死に恐怖している。
仕方ない、こればっかりは。
なぜなら、そこには本来あってはならないはずの、地獄が広がっていたのだ――
――大量の鬼人が……第五層以降の階層にいるはずの鬼人が。
群れをなし、第三層ないに村を形成している。
鬼人が寄ってたかって、人間をいたぶろうとするその光景は、まさしく僕の想像する地獄そのものだった。
「あっ、助けてください……お願いします」
女性は、こちらに気づいたようで、喉からか細い声を出して、僕に助けを乞う。
助けを求める声を聞いた僕の体は、無意識に鬼人の村に向かう。
今この瞬間、地獄にたった一人で、馬鹿な男が乗り込んだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
――それは、目を疑うような光景だった。
目の前にいる男は、単身で鬼人に突っ込んでいく。
助けを求めたのは私のはずなのに、正直な話、その男が正気であるように感じなかった。
当たり前だ、助けを求められたとはいえ、第五層魔物……国の騎士を数百人動員して、やっと勝てるような魔物が大量にいる村に、ほとんど無策でずけずけと踏み入るなんて。
それで死んでしまったらどうするんだ、そう思った。
しかし、結果的にそれは杞憂に終わった。
それは何故か――
――彼が鬼人に触れた途端、鬼人は何故か倒れ、絶命しているからだ。
さらには、彼の動きは人間がなせるようなものではない。
それこそ、中級冒険者の上位でやっとできるようなものだろう。
彼は私と同い年――大体十六歳くらいにしか見えないというのに、どうやってそんな力を手に入れたんだろうか。
不思議で仕方がない。
彼の力といい、身体能力といい、それは明らかに一般人どころかそこら辺の中級冒険者を凌駕している。
そうして数十分が経った頃だろうか、鬼人の村では、その住人たる鬼人が一人残らず絶命していた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「これでよしと」
最後の鬼人を討伐した僕は、大きく息を吐いた。
とんでもないイレギュラーもあったものである。
普通は第三層にいないはずの鬼人が出現したどころか、村まで形成してしまっているなんて。
こんな経験、この先一生ないかもな。
……今回、僕は新たなスキルでの戦い方を編み出した。
これは相手の体に触れてしまえば、ほぼ確実に勝利できる方法。
……仮に『
我ながらとんでもなくカッコいい名づけだ。
さて、そんな『死神の御指』なのだが――
――この技は相手に触れることで、相手の脳をスキルによって限界まで小さくし、実質的な脳死に追い込むという技だ。
対人でも、多分効果があると思う。
魔物相手では正直、ここまで効果てきめんとは思わなかった。
しかし、『死神の御指』は相手に触れていないと発動できない。
相手が実体を持たない存在であるなら、この技が効くことはないだろう。
だとしても、おつりがくる程度には強い技だと思っている。
「とりあえず、これで魔石は全部かな」
考え事をしながらも、僕は全ての鬼人を解体し、中にある魔石を取り出せた。
魔石の大きさは、前の鬼人の魔石よりも一回り大きい。
これをスキルで怪しまれない程度にデカくしよう……。
もはや罪悪感なんてなくなってしまった。
そんなことをしていると――
「あ、さっきは助けてくれてありがとうございました」
――さっき僕に助けを求めていた女性が話しかけてきた。
僕が彼女の命の恩人だからか知らないが、彼女の僕に対する警戒は見られない。
流石にチョロすぎると思った。
くだらないことを考えていた僕に、予想外の言葉が投げられる。
「ところで、私たち、会ったことありませんか?」
はい?
______________________________________
数日間ずっとサボってました……すみません許してくださいお願いしますなんでもしますから(なんでもするとは言ってない)!!!
これからは毎日更新出来たらやりますから!お願いします!
じゃあ早速明日も更新を……ごめんなさいやっぱ無理かも。
とりあえず、なるべく高頻度で更新はするつもりなので、これからもこの作品をよろしくお願いします。
次の更新まで待ちきれないなら、私の執筆している別の作品も読んでくれたら嬉しいです。別作品はここから→ https://kakuyomu.jp/users/arumama_red_dazo
今回の話の途中で出てきた『中級冒険者』という単語、設定ミスとかではありません。
他にも『下級冒険者』や『上級冒険者』があります。
それぞれ
下級冒険者:八級~六級
中級冒険者:五級~三級
上級冒険者:二級~一級
となっています。
八級だとかいちいち細かく出すのめんどい――とか決してそういうのではなく読者の皆様にさらに分かりやすく強さを知ってもらうための工夫です(大きな声)!
零級冒険者は、一級冒険者とも一線を画すため、この下級~上級の枠にあてはまりません。
一部では特級冒険者なんて言うらしいですけど、多分本編には登場しない言い方です。
♡と☆、ついでにフォローとかしてくれたら、更新のモチベーションに繋がりますので、押していただけたら幸いです。
これからも稚拙ではありますが、拙作をよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます