第4話 一時帰宅と新メンバー検討
鬼人を倒した僕は、一度ダンジョンから出ることにした。
ダンジョンから出てくると、外はすっかり暗くなっていた。
まあ、何時間もダンジョンに潜ってたらそんな時間にもなるか……。
さて、ダンジョンから出て、倒した魔物の素材も手に入れた僕は最寄りの街の冒険者ギルドへと向かっている。
冒険者ギルドは、世界各地に点在する、その土地の冒険者の管理所のようなものだ。
さらに、ダンジョン産のアイテムや魔物の落とす素材などを取引もしてくれる。
僕は最近冒険者になって、このダンジョンから最寄りの街の『ロジンクス』の冒険者ギルドの冒険者として登録された。
ロジンクスは、近くにダンジョンがあることもあって、世界的に見ても冒険者が多い街だ。
ダンジョンから歩いて一週間ほどで、ロジンクスに到着した。
街に入ると人の喧騒が一気に伝わってくる。
周りを見回せば、どこもかしこも冒険者がいる。
冒険者の街なんていうロジンクスの二つ名は伊達じゃないらしい。
冒険者ギルドは、街の中心部にある広場に大きく建っていた。
冒険者ギルド内に入った僕は、受付のカウンターへ向かう。
「本日はどのようなご用でしょうか?」
「素材の換金です」
「かしこまりました。では、素材を拝見いたしますね」
僕は受付の女の人に魔物の素材が大量に入った袋を渡した。
受付の人は少し驚いたものの、気を取り直して中に入っている素材の吟味を始める。
魔物の中には魔石と呼ばれる核のようなものがある。
魔石は魔力を持ってない人間が魔力を行使するための貴重なエネルギー源として、よく売買されるのだ。
ゴブリンやオークだけでなく、第五層魔物である
……ここだけの話、強い魔物であるほど魔石が大きく、エネルギー量も多いのだが、今回手に入れた魔石は僕がスキルで大きくしてある。
その分だけ高額な取引が見込めると思った僕の悪知恵である。
いや、まあ、魔石は大きいに越したことはないし別にええやろ!
「素材の鑑定、完了いたしました」
「ありがとうございます。それで、結果は?」
「鑑定の結果、ゴブリンの魔石が36個、オークの魔石が27個、コボルトの魔石が16個、鬼人の魔石が1個で間違いありません。しかも、鬼人の魔石はとても貴重で頻繁に取引されるものではありませんし、通常よりも強い個体が多かったのか、魔石が通常の三倍ほども大きいため、結構な高値が期待できます。それを込みで……銀貨40枚となりますが、よろしいでしょうか?」
「分かりました」
「それにしても、どこに行ったらこんなに大きな魔石を持った魔物が多く現れるんですか?鬼人の魔石までも大きいですし、通常の三倍なんて相当ですよ?」
「あはは……企業秘密で……」
受付の人の追及に苦笑いで言葉を濁すと、僕は換金してもらった金を受付の人から受け取った。
ほんのちょっとだけ罪悪感……。
それにしても銀貨40枚なんて相当な稼ぎだ。
罪悪感なんて忘れて、大きな儲けでホクホク顔の僕は、言い忘れたことがあることを思い出して、受付の人に今日のことを報告する。
「えっと、実はダンジョンの第二層に、本来ならば出現しないはずの鬼人が出現しまして……」
「そんなイレギュラーが……分かりました。今度はギルドの方から注意喚起をしておきましょう」
「助かります」
きっちりとギルドへの報告を終えた僕は、晩ご飯を食べにギルドから出たのだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
晩ご飯をたらふく食べた僕は、お腹をさすって宿へ向かった。
宿屋『タベルナ』に着いた僕は、部屋を借りる。
自分の部屋の鍵を開けると、部屋のベッドに全力でダイブした。
今日は最高の一日だった。
念願だったスキルを得て、ダンジョン探索初日から鬼人まで倒してしまった。
もしかしたら、世界最強だって夢じゃないかもしれない。
いや、それは流石に調子乗りすぎか……。
明日は朝イチでギルドへ向かおう。
パーティーメンバーの募集も考えなくてはならない。
仲間と一緒に冒険出来たら、きっとすごく楽しいんだろうな。
仲間は面白いやつがいいな。
可愛い子もいいかもしれない。
明日という日が楽しみで仕方がない。
いろいろな考えが頭に浮かんでは消える。
そんな曖昧な感覚に身を委ねると、たちまち僕はまどろみに落ちていくのだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
曙光が窓に差し込み、光の刺激が僕を眠りから引きずり出す。
まだ眠く、しばらくは抵抗しようとしたが、今日という日の目的を思い出すと根性でベッドから這い出た。
ベッドは鬼人よりも手ごわいと思った。
一度目を覚ましたら、後は諸々の準備をするだけだった。
部屋を片付けて、宿のおばさんに部屋の鍵を返却する。
タベルナを出た後、食事をとって冒険者ギルドへ向かった。
「おはようございます。ご用は?」
「パーティーメンバーの募集です」
「かしこまりました。ここに名前と年齢、そして冒険者等級を記入してください」
「了解です」
昨日の受付の人とは打って変わって、淡々とした雰囲気の受付の人に要件を伝えた僕は、出された紙に自分の名前や年齢を書く。
冒険者等級の欄には八級と書いた。
冒険者等級は冒険者の強さの指標となる、冒険者としての階級を表している。
一番下の階級は八級、一番上は零級となっている。
冒険者としての頂点である零級冒険者は、世界にたった五人しかいない。
零級の冒険者ともなると、国王から直々に依頼を受けたりもするらしい。
だから稼ぎがバカ高い。ずるい。
紙に全てを書き終えた僕は、受付の人にチェックしてもらい、パーティーメンバー募集の承諾のハンコを押してもらった。
その紙をギルドへの依頼表などが貼ってある掲示板の募集専用板に貼る。
これで誰かが来てくれたら嬉しいな、なんて思いながら、今日も今日とて、僕はダンジョンへ向かうのだった――
――その様子を見ていた誰かに、後をつけられていることなんてまったく気づかないままに。
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作中に出てくる貨幣の設定です。
この世界の貨幣は全て硬貨です。
価値が低い順から、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、となります。
日本円に換算すると、鉄貨が一円、銅貨は百円、銀貨は一万円、金貨は百万円、白金貨が一億円となります。
小さい硬貨が百枚集まることで次に大きい硬貨になる、硬貨ゲームです。
私は硬貨ゲーム……ではなくス〇カゲームやったことないんですけどね。
あ、お〇ぱいゲームはやったことありますよ。
ちなみに、零級冒険者の稼ぎは月に白金貨五枚となっています。まあ零級冒険者のヤバさの指標程度にどうぞ。
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一応毎日更新できるようにはしてるんですけどね……。
ん?昨日は更新されてない?……黙らっしゃい。
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