第16話:梅雨の入り前。萌える教室
9時って報告しておきながら、8時に更新してやりました!ドヤァ
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学級日誌。上と下とで日直当番の名前を書く欄が並んでるんだけど。
毎回毎回、私は自分の名前を上に書こうか、それとももう一人の日直の子の名前を上に書こうか迷ってしまう。それで結局、私はいつも下の欄に自分の名前を書く。
これは単なる私の気持ちの問題で。
私はよく、クラスメイトや周囲の人たちから「きっとみんなを引っ張っていくタイプだね」なんて言われることが多いんだけど。
むしろ本当の私は真逆だ。
それを両親以外、未だ誰も知らない。気付いてくれない。
どちらかと言えば、私はリードされたいタイプの人なんだ。
だから、私は今も探している。
何処かに私の手を引いてくれる人はいませんか?
✩.*˚ ✩.*˚ ✩.*˚
頬杖をついて、今もなおペチペチと音をたてながら窓を叩く雨。そんな外の様子を眺める。
あっという間に週末金曜日。
月曜日、菜乃葉の手料理から始まって。あれから私たちは交互交互でお弁当を作り合っている。
だけど今日は、私は一人で購買で買ったメロンパン一つで昼食を済ませた。
『―――――――――』
教室がワイワイガヤガヤとして、帰りのショートホームルーム中も教室の喧騒はやまない。担任の教師が話し始めてるにも関わらず、クラスメイト達は口を閉じる様子が無い。先生も何も言わない。
でも、正直そんなこと。今はどうだっていい。
未だかつて、こんなにも一人が退屈だと感じたことがあっただろうか。いいや、無い。
あぁ、六限目の古文で習った反語を早くも日常生活で使ってしまった。
いやそんなこともどうでもよくて。
教室の前方。外から視線をはずして右斜め前に目を向ける。
空席が一つ。
そう、菜乃葉が風邪で休んだ。
今日は菜乃葉がお弁当を作る日だったから。だから私は購買に行かなきゃいけなくなったのだ。
あぁ、退屈だ。私は菜乃葉の他にも友達がいるから、普通に休み時間とかはその子たちとお喋りしたりしたけど。
それでも、私のこの、なんだろう。心の渇きは潤うことは無かった。
いっそのこと、今日は傘をささずに、雨に濡れてみようか。たくさん雨に打たれたら、この渇きも少しは潤うのかな。
そんな馬鹿なことを考えていると、急に、やけに教室が静かになった。
なんだろう。
そう思って視線を教卓、並びに黒板に向けると。
そこには白いチョーク。綺麗な字。デカデカと。
――体育祭について(種目決め・実行委員決め・応援団募集)
なるほど、と思った。どうやらクラスメイト達は体育祭に興味津々らしい。
一時の静けさの後、すぐにまた喧騒は元通り。「体育祭だってー!」「リレーだけは絶対にやだ」「一緒の種目しよっ!!」とかとか、みんながそれぞれ、各々の友達と楽しそうに体育祭に向けて胸を踊らせている。
もちろん、私にも沢山の子たちが話しかけてくれた。
「
「うーん、保留かなぁ」
「夜凪ちゃんは何の種目やるのー?」
「それもまだ考え中ー」
「夜凪っちって良い形のおっぱいだよね!………大きさはDかな?」
「満面の笑みで怖いんだけどこの子!」
こんな風に、本当に色々な友達から話を振られるんだけど、どうにも会話が続かない。原因は私にある。私がそもそも、会話を続ける意思が無いのだ。
そして、淡々とした返答ばかりしていると次第に友達はその友達と話すようになり、私の周りには誰も居なくなる。
「ねーねー、何カップか教えておくれよー」
いや、一人だけ離れない子がいたけど。
この子は無視だ、無視。
変人と私を除く、クラスメイト達と先生までもが、何やら熱気に包まれていた。
体育祭、それは正しく学生時代の青春の一ページになり得るもの。みんな、燃えているのだ。女子校という女の園に通う、うら若き乙女たちが、萌えている。
今日じゃなければ、私もみんなと一緒になって盛り上がってたのかもしれない。
………でも、やっぱり。
菜乃葉がいないと、つまらない。やる気が出ない。
「夜凪っちのおっぱい触ってもいーい?」
「いいわけないじゃん」
「………」
「ちょ、やめ、ちょっと!?無言で手を伸ばしてこないで!??」
ちょっといい加減、ほんとにスルー出来なくなってきたよ、この子。
「だいたい、夜凪っち、って私を呼んでるけどさぁ。私、あなたと会話したの今日が初めてでしょーが!!」
「そんなことはどうでも良きじゃないかよー。大事なのは今でしょー?今、自分がどうしたいかでしょー?」
「何を名言っぽいことを!!」
この子の名前は、えーっと確か………。
あれ?やばい、思い出せない。昨年は違うクラスで全くと言っていいほど接点が無かったし。進級してからも、新しいクラスでまだ二ヶ月も経ってない。
そりゃ、まだ完璧には全員の顔と名前が一致する訳ないじゃない。
「夜凪っちはお優しい女の子だよねー」
「な、なに急に」
「天野っちのこと、心配してるんでしょー?」
「え?」
「何で、自分はこの子のこと何も知らないのに、この子は私のこと知ってるの?って思ったー??」
「お、思ってないし」
「それはねー、私がねー、お二人を密かに推してるからだよー」
「……推してる?どういうこと??………て言うか、別に私、あなたのこと何も知らないって訳じゃないし!」
「おやおやー?もしや、私の事ご存じー?」
「名前は思い出せなくてごめんだけど、これだけは知ってる!あなた、変態でしょ!!」
私はそこそこ良い形をしてると自負する胸を張ってドヤァ。
「お、おー!そ、それはそれは」
「えっへん!」
「じゃあ、名前もこの際、覚えてもらおうかなー。私の名前はー、」
彼女は私に教えてくれた。
間延びした喋り方が特徴的な彼女。
今の私はまだ知らない。
この先、彼女からもっともっと色々な意味で沢山のことを教えてもらうことに。
例えば、彼女が先程言った。
大事なのは今、今自分がどうしたいか。
それは、心の中の大半を病気で寝込むイメージの菜乃葉が占めている今の私にとって、とても大きな影響力のある言葉だった。
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