第11話:私の最推しはキョドる
深夜の2時37分頃。
私は未だに寝れずにいた。
胸を触らせた。真希ちゃんに。強引に、手を取って触らせた。
その後すぐに真希ちゃんはベッドに潜り込んでしまって、「一緒にベッドで寝たい」という私のお願いは「それは無理っ!!」と断られてしまった。
私がこの世界に転生してから、今のところこの身体に不具合は無い。原作では急病で入院の流れだったけど、私が転生、憑依したことによって、天野 菜乃葉は健在するストーリーに変わったのかもしれない。
今日は色々な偶然が合わさって、きっと本来では起こり得なかった真希ちゃんの家でのお泊まりに行き着いた。
決心はした。
菜乃葉ちゃんでは無く、私として真希ちゃんと僅かながら数日を過ごした結果。どうやら、真希ちゃんは菜乃葉ちゃんのことを何かと『親友』と付けて、自身の気持ちを誤魔化してる節がある。
だから、真希ちゃんが菜乃葉ちゃんを見てくれないなら、私が気になるように仕向けてみせる。
そう、決心はした。
したけれど、具体的に何をすれば良いかは決まってない。と言うか、分からない。
だって私も、恋愛なんて未経験なんだから。
この数日は、ゲームで本来なら一人でいる真希ちゃんに他ルートのヒロインが取る行動を私が真似た。
本当は今頃、真希ちゃんには新しい友達ができるはずだった。しかしそれは、私が真希ちゃんと一緒にいることによって起こらない。
つまり、私は一つの新人物登場イベントを潰し、尚且つ他ルートの好感度上げイベントをも自分のモノにしたのだ。
これは原作を知ってる私だから出来たこと。
しかし、ここ数日はべつにこれと言って、真希ちゃんに菜乃葉ちゃんを意識させようとかは思ってなかった。
ただ、私がいることで、勝手に私ルートへとイベントがどんどん発生してしまっただけなのだ。
だから、知らないことまで起こった。
これも、私ルートに入ったからなの?
未だに、考察は迷路を行く。
しかし、迷宮入りする思考とはまた別視点から。絶対にこれだけは転生した最初っから揺らがない真実もある。
それは――――
「私は好きだよ。真希ちゃん」
真希ちゃんは寝てる。だから言える。
まずは言葉にしてみることから。
私に背を向け、縮こまるようにブランケットをかけ眠っている真希ちゃんの。その長い髪を勝手に手で梳く。
夜目が効かない状態だから、あまり真希ちゃんの機微な仕草は把握できない。けれど、心無しかピクピクと動いているような……いないような………
あぁ、なんだか、髪でも何でも、真希ちゃんのものに触れているだけで心が安らぐ。胸がポカポカする。安心する。
さっきまで全然寝付け無かったのに。
今はなんだか、どっと睡魔が襲ってきて、ぐっすりと眠れそうな予感だ。
「おやすみ………まー、ちゃん」
こっそりと髪を触ってたことがバレないように、私は自分のお布団に戻って今度こそ眠りについた。
『――てる?――葉、――るんだよね?』
微睡みの中で、前世でも今でも、ずっと大好きな声が聞こえてくる。ような気がする。
『………私のこと、好きなの?』
今度ははっきりと、大好きな人がそう言っているような気がした。
「ぅん。……すき、だよ。そーゆーいみで。………えへへ」
『〜〜〜〜っ/////』
ガサゴソと音がする。
なんだろう。温もりがすぐ近くにあるようだ。
夢かな。とってもおかしな夢だ。
――――ちゅっ――――
頬っぺたに、何かが触れた。柔らかい何かが、触れた。……気がしなくもない。
んぅ、、変な夢。
それから、声も温もりも無くなった。
夢の出来事とは一瞬である。つまり、やっぱり夢だ。儚いものだ。
そして私は、目覚まし時計が鳴るまで熟睡した。
◇ ◇ ◇
ジリリリとうるさい目覚まし時計を止めて、ボサボサの髪も気にせずに欠伸をしながら伸びをする。
「あふぅ。………もう起きてたんだ。おはよぅ、真希ちゃん」
「えっ!?あ、う、うん!!!お、おは、オハヨッ!!(裏声)」
???
朝起きたら、真希ちゃんがすっごくキョドってるんだけど………。
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