第40話:演劇シナリオ「心を失くした最強傭兵は王国に恋をする」






 演劇をやるにあたって、俺たちにはやることがたくさんある。


 台本の制作。


 配役の選定。


 演技練習。


 そして最も肝となる効果音の録音などだ。


 とりあえず台本がなければ始まらない。

 既存の物語や伝説を使えば良いのでは、という案が濃厚かと思われた。


「僕に任せてくれないか? 実はお話を書くのが趣味でね。 書き留めた話がいくつもあるんだ」


 ツナオのカミングアウトによって、台本は彼の物語を使用することに決まった。


 読ませてもらうと、ツナオの作品はどれも質が高かった。

 英雄譚から冒険もの、恋愛ものまでバリエーションも豊富である。


「本当に使っていいの?」


 俺が確認すると、ツナオは悪い笑みを浮かべて言った。

 

「その代わり配役の決定権が欲しい」


 そこはかとなく嫌な予感がしたが、作成者に配役を任せるのは妥当であり断る理由もなかったので俺は頷くのであった。




***


作者:ツナオ

タイトル:心を失くした最強傭兵は王国に恋をする

あらすじ:守銭奴の傭兵と国家滅亡の危機にあった王女が戦場で契約を交わし、国を平和に導き、結ばれる。



第1幕~運命の出会い~


 平穏な小国アルパーカ王国。

 そこには美しい王女アリアが住んでいました。 しかしアリアは呪いの証と恐れられる左右違う瞳を持つため、王国内で孤立していた。 彼女の唯一の仲間は忠実な侍女リリアだけでした。


 そんなアリアは父王が急逝し、若干18歳で王位につかなければなりませんでした。 国王の死によって隣接している国が、ここおとばかりに戦いをしかけてきたのです。


 一方アリアの国に近く、傭兵として生計を立てていた男アダムス。 彼は金と利益のためだけに戦場を渡り歩き、心を殺して生きてきました。

 彼の過去に多くの裏切りを経験し、大切な人を失くし傷ついた心があり、金さえもらえば悪も善も関係なく働くようになっていました。


 アリアの国が敵の侵略にさらされ、城に攻め入ったアダムスは宝物庫を発見しました。 周囲が略奪をする中、アダムスが戦う上で決めているルール――略奪はしない――があったため戦いを終わらせるべく、一人王女を殺すために玉座へと向かうのであった。 


 アダムスはアリアの首に剣を突きつける。

 するとアリアは美しいオッドアイで彼を見つめて言った。


「あなたに全ての財も、私も差し上げます。 ですから私に寝返ってくれませんか、傭兵さん?」


 アダムスには善悪の基準はない。

 金払いがいいか否か。


 彼は脳内で計算し、彼女の首から剣を離した。


「いいぜ、その話乗った」


 アダムスは卓越した強さで、味方だった兵士たちを切り捨てていった。

 

 突然のアダムスによる反逆に虚をつかれた兵士たちは、瞬く間に首を刎ねられ撤退を余儀なくされるのであった。



第2幕~異なる世界の出身者~


 アリアとアダムスは全く異なる世界に生まれました。 アリアは王国の王女で、肩に王国の未来がかかっています。 一方、アダムスは金と利益を追い求め、他人には冷徹な態度をとる傭兵です。


 最初の数日、アリアとアダムスは互いの考えの違いを感じつつも、王国をさらなる敵から守るための計画を立てます。 アダムスは軍事的な専門知識を提供し、アリアは彼女の国についての状況を話します。



第3幕~ 感情の芽生え~


 日々の共同作業の中で、アリアとアダムスの間に感情が芽生え始めました。 アダムスは徐々に彼の冷徹な態度の裏に隠された温かさを見せ、アリアは彼の金銭至上主義に垣間見える優れた品性を発見しました。


 アダムスは王国を守る戦いでアリアを導き、二人は共に困難な状況を乗り越え、互いに頼りにし合いました。アリアは彼に対して感謝の念を抱き、アダムスも自分の心の変化に気づいていました。



第4幕~愛の確信~


 敵の侵略が激化し、アリアとアダムスは困難な戦闘に挑むことを余儀なくされました。 彼らの共闘の中で、アダムスは自分の命を犠牲にしてアリアを救う瞬間が訪れました。 アリアは彼の勇気に感銘を受け、二人の関係は深まりました。


 戦闘が終わり、王国は敵を撃退しました。 アリアはアダムスに報酬を渡すことにしました。 しかしアダムはそれを拒否しました。彼は自分の心をアリアに明かし、芽生えていた想いを彼女に伝えます。


 そして優しく口付けしました。


結末~新たな未来への一歩~


 アリアとアダムスの愛は、王国の存亡を賭けた戦いの中で芽生えました。 彼らは異なる出自の二人でしたが、互いに助け合い、変化し、愛し合いました。


 そして王国は平和を取り戻し、二人は楽しく暮らすのであった。



***








 


 

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