第32話:初めての活動は○○パで!





「さて研究室は無事立ち上がった!」


「ここが今日から俺たちの研究室だ!」


 俺たちは自分たちの研究室となった部屋にやってきていた。


 そこは棚と簡素なテーブルしかないような部屋であった。 これらは学園の備品なのだろう。    

 一見綺麗な見た目をしているが、長年使われているであろう使用感が見て取れた。


「自分たちで色々そろえる必要がありそうだね」

「じゃあとりあえず俺の持ち物をいくつか置いておこうか」


 ツナオの言う通りこのままでは活動がしずらい。 それに遺物の研究をこれから始めるのだから、勉強がてら俺の持つ遺物をいくつか見てもらいたいところだ。


「じゃあ食器棚をここに置いて、あと冷蔵庫と――」

「ちょっと待ってくれ……僕は今、とんでもない光景を見せられている気がする……」


 俺が収納袋から遺物を取り出し、設置しているとツナオが頭痛をこらえるように眉間を揉んだ。


「無限収納袋……これも遺物ですか?」

「いやこれは知り合いにもらった魔道具、遺物じゃないよ……あげないよ?」


 袋に目が釘付けとなっている、フブキの視線からずらすように俺は袋を隠した。


「それがあれば色々な武器を持ち歩けるのに……」

「武器?」

「そう、戦う相手、戦場によって最適な武器は異なりますから」

「いやフブキ、皇女でしょ? なんでそんな修羅な状況を想定してるの?」

「常在戦場です」


 フブキが武人すぎる。

 

 とはいえこれはフェリにもらった大事な袋だ。

 かなり珍しいものだし、何より便利だからいくら金貨を積まれてもこれに関しては売るつもりはない。


「そんなことよりこっちに注目して欲しいかな。 一応、俺たち遺物研究会だし」


 俺はそう言いながら冷蔵庫に魔力を注いだ。


「この箱は一体なんなんだい?」

「これは冷蔵庫っていう遺物で、食材を冷やしたり凍らせたりできる道具だよ」

「そんな機能のある魔道具なんて聞いたことも――冷たい……!!」


ツナオはとても驚いた様子で、扉を開け冷蔵庫の中をしきりに覗き込む。


「これエクリオが元々探してたやつだよね?」

「うん、あの後村の周囲でいくつも降って来たんだ……」


 俺が冷蔵庫と電子レンジを探していたことを、知っていたシイラは苦笑いした。


「それで今日は何かするのかい? 今後の活動について話し合いは必要だよね」

「うん、それなんだけど俺から提案がある」


 俺はそう言って、食器棚に入れておいたタコ焼き機の遺物を取り出した。


「タコパしよう!」

「タコパ……それは一体なんなんだい?」

「響きが禍々しいですね……」


 この世界ではタコ焼きも、タコも一般的な食べ物ではない。

 あれをなんと説明すればいいか。


「まあ小麦粉をボール状に焼いた食べ物だよ」

「へえ、ドーナッツとかクッキーみたいなものかな? これでそれが作れるのか、凄いな」

「まあこれはお菓子というよりおつまみに近いけど……とにかく作り方は俺が知ってるから、遺物を使って調理したたこ焼きを食べながら今後の活動を話し合うのはどうだろうか?」

「「「賛成!」」」


 三人とも賛成してくれたので、さっそく俺たちは商店街へと買い出しに行くのであった。


 そして買い出しを終えた俺たちは、食材をテーブルに並べ調理していく。


「よーしじゃあ小麦粉と卵と芋を混ぜていくよ」


 俺は前世で作った時のレシピを思い浮かべながら作業していく。


 商店の品ぞろえはかなり豊富で、ほとんどの材料が手に入ったので安心してたこ焼き作りができる。


「ここでソースで生地に味付けして」


「タコ焼き機が温まるのを待つ間に、具材を切っていく」


 あとは油を引いて、好きな具材を入れ、生地を流して焼き転がすだけだ。


 しかしタコだけはどうしても手に入らなかったので、各々の好きな具材を入れることにしたのでそこだけが少し心配だ。


「ちょっとツナオとシイラ! 包丁の持ち方怖いって!」


「フブキは振りかぶらないで、テーブルまで切れそうだから……」


 ツナオとフブキは料理なんてしたこともなかったのか、おっかなびっくり作業を進めて行く。

 シイラはシイラで慣れている手つきだが、俺から見ると危なっかしい動きが多くてひやひやする。


 まるで家庭科の授業になりつつあるが、俺たちは全ての準備を終えた。


 そして具材を入れ、生地を流し込んでいく。


――じゅ~


 焼ける音とともに、良い香りが漂ってきた。


 そして生地の周りが固まってきたら、順番に串でひっくり返していく。


――くるん、くるん


 これが綺麗に決まるとすごく気持ちいいのだ。


「エクリオ、僕にもやらせてくれよ……うわ! 意外と力加減が難しいな」


 ツナオは生地をぐちゃぐちゃにしながらなんとか一つ回してやりきった感じを出しながら呟いた。


ーーがしゃん


 金属音に振り替えると、いつの間にか勇者アーマーローズがやってきていた。


「遅くなった」

「間に合って良かったよ。 アーマーローズさんもやってみる?」


 彼女はこくりと頷いて甲冑を脱いだ。


 そして、


ーーくるくるくるくる


 まるで職人のような早業でたこ焼きをひっくり返した。


「すご!」

「早すぎて動きが見えなかったよ……」

「……武器の扱いは得意だから」


 アーマーローズはそう言って串を振るが、それは武器なのだろうか。


「研究会立ち上げおめでとう。 私のことはマロと呼んで」

「ありがとう! これからよろしくね、マロ!」


 思っていたよりマロは気さくな性格らしい。

 これなら未だに恐縮した様子の、他のメンバーとも上手くやっていけるだろう。


「それじゃあ食べようか!」


 そして俺たちはタコではなく様々な具材が入ったたこ焼きを食べるのであった。


「チョコ入れたの誰だよ……」

「こっちはフルーツが……うぇ」


 そんな感じで一日目は話し合いも忘れて楽しく過ごすのであった。




 





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