第2章~スローライフ満喫+聖女を助ける
第16話:帰郷/家でたむろ
「それでシイラはどうして付いてくるのさ」
「一度言っておけば転移で迎えに来れるからに決まってるじゃないか……それだけだよ」
船は自動操縦機能によって村へ向かって空を飛んでいる。
学園の話をした後、俺は帰ることになった。
するとなぜかシイラもついて来たのだ。
「その姿を見てると全然説得力ないんだが」
船のデッキのソファーで横になりながら、飲み物を飲みながら軽食を食べ持ち主上に満喫している様子のシイラを俺は軽くにらみつけた。
「そんなこと……ない。 ないから」
「どうして二度言う?」
「細かい男はモテないよ?」
「俺はまだ十二歳だ」
変に気を使われるよりはこちらも気楽でいい。 思うところはあるが気にするのもバカらしいと、俺がため息を吐いた。
『まもなく目的地に到着いたします』
船からそんなアナウンスが聞えてきて、俺はソファーから起き上がって前方を確認した。
「見えた」
懐かしい村が遠くに見えて、俺はなんだか故郷に帰ってきたかのような安心感に思わず頬が緩んだ。
「あそこがエクリオの暮らす村かな? すっごく田舎――のどかなところだね!」
あからさまに気を使ってくれているが、俺としてはこのザ田舎な感じが好きなのだ。 気を使われるいわれはない。
「そこがいいところだから。 どうする? すぐ帰るのか? それともちょっと寄ってく?」
「そうだね。 エクリオの家がどんな感じか気になるし、お邪魔しようかな!」
俺の家の周りは都合よく余った土地がある。
そこに俺は船を着陸させた。
「? 誰かと一緒に住んでるの?」
「いや、一人暮らしのはず……だけどなんか声がする……?」
「もしかして物盗りかもしれない……」
「いやいや、この村でそんなの出ないって……でもなんだろ、村長――フェリかな?」
俺の家に出入りする人間といえばフェリカ、ピトのどちらかだろう。
そうは予想しつつも俺は恐る恐る扉を開け――
「キンッキンッに冷えてやがる! カンパーイ!」
「にゃはは! ホットミルクでカンパーイにゃ!」
「このレンジとやらはいい。 料理する気が失せるぞ」
「分解したい……いやダメだ……でもやっぱりやってしまうか! 助手が返ってくる前に元に戻せば問題ない!」
見知った人間がまるで宴会のようなバカ騒ぎをしていた。
「問題大ありだっての!」
俺はそう言ってピトの首根っこをつかんだ。
「うわああああ! 出たあああああああ!」
「人の顔見て出たはないだろ。 この遺物バカ……というかみなさん、ここで何してるんですか?」
俺の言葉に騒いでいた面々は、居心地悪そうに背筋を伸ばした。
「冷蔵庫で冷やしたエール飲んでました」
「レンジでミルクを温めると最高に美味いにゃん」
「違うぞ? 初めはちょっと借りるだけのつもりだったんだ! だけどこの部屋にある遺物は便利すぎて――」
俺は床に散乱する服を持ちあげてため息を吐いた。
「だから住んでいた、と?」
「いちいち来るのも面倒になってつい、な……悪かったと思ってる」
フェリは申し訳なさそうに頭を下げた。
そもそも怒ってないし、お灸はこれくらいでいいかとせっかくだからシイラを紹介することにした。
「ま、もういいです。 そんなことよりこの人シイラと言うんですけど、時々村に遊びに来るかもしれないのでよろしくお願いします」
「そうか! エクリオの友達か! 私はこの村の村長を務めているフェザリード・エル・フルールだ。 長いのでフェリと呼んでくれ」
「シイラです。 エクリオとは商業都市ラクイチで出会いまして――」
シイラのことはフェリに任せておいて大丈夫だろう。
何か言いたそうにピトはもじもじいつつも、口を開いた。
「わ、私は! どうしても遺物を触りたくて――」
「みなまで言わなくていいです。 分かってるんで」
「私の告白も最後まで聞けぇ!」
ないがしろにされたと感じたのか、ピトが涙目で抗議してくるが俺は無視してにやりと笑った。
「新しい遺物、手に入れたよ……思っていたのとは別の物だけど」
「!!!!!」
ピトは遺物と聞いた途端そわそわし始めた。
「おーいエクリオ、僕そろそろ帰るよ」
シイラは「また来る」と言って家の扉から出た。 外で転移するのであろう。
「見たい?」
「見たい!!!」
シイラを見送って、俺はピトを誘って結局その場にいる全員を連れて俺は船に向かった。
「なんじゃこりゃーーーー!?」
「船の遺物。 悪いけどすでに改造済みなんで」
「陸に船……これじゃあ直したとて使え――まさか飛ぶのか……?」
ひっくり返る勢いで驚くピト、一方フェリは速攻で正解にたどり着いた。
「ご名答。 中へどうぞ」
そして中へ入ると全員が目を輝かせて探索し始める。
「僕が不在の間、畑の管理ありがとうございました。 お礼と言ってはなんですが、よろしければご飯をごちそうさせてください」
「丁度お腹が空いてたんだ! ぜひ食べさせてもらう!」
俺は再び日本食モドキを振る舞い、ジャグジーからの、飲み会コースでいつかのようにバカ騒ぎで夜を明かすのであった。
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