急がなくていいよ

@nanabebenana

 急がなくていいよ

 1


   「いつまで食べてるのよ!」

 おそく、ゆっくりと朝ごはんを食べていた僕をお母さんは叱りつけた。

  「学校に遅れちゃうでしょ。それに今日の準備はしたの?夜遅くまで遊んでいるからこうなっちゃうの!」

 食べ終わった僕はせかされるようにランドセルを背負って家を出た。

 

 2


 走ってなんとか遅れることなく学校のついた。僕が教室に入った時にはもうみんな席に座っていた。

  「今日もギリギリだな。でも遅刻しないところはすごいぞ」

 先生のその言葉にみんなが笑った。もう少し早く起きれば毎日走らないで良くなるじゃんかーーいや〜どうしても寝坊しちゃうんだよね。

 そんな会話をしながら僕は席についた。

  「みんな揃ったことだし朝の会始めるぞ。今週は交通安全強化月間だ」

 今日もいつも通り朝の会が始まった。でも僕は、どうして朝起きれないんだろうなあ、なんて考えながらぼーっと窓の外を見ていた。

  「特に焦っていると周りが見えなくなるからな、気をつけるんだぞ、特に、、、!」

 そう言って先生は僕を見た。みんな笑った。けどぼーっとしていた僕はよくわからずただただみんなにつられて笑った。


 3


 まずい、今日も寝坊した。

 寝起きの目で見た時計は起きる時間をとっくに過ぎていた。それで急に目が覚めた。なんでお母さんは起こしてくれないんだろう?いつもなら大声で起こしてくると言うのに。そんなことを思いながら急いで着替えて階段を降りた。リビングではお母さんが椅子に座っていた。テーブルの上には朝ごはんが準備されている。

 「今日はゆっくりでいいの、急がなくていいのよ」

 お母さんが言った。へえ今日はなんかあったっけ?ま、急がなくていいならラッキー。

 僕は席についた。なんだかお母さんの表情はいつもと違った。変な日だなぁ、なんてこと考えながらご飯を食べ始めた。


 4


  「ごちそうさまでした!」

 そう言って僕は席をたちランドセルを持った。

  「もう行っちゃうの?まだゆっくりしていかない?」

 そんなゆっくりしていいのか、いやでも逆に不安になる。

  「いや、けっこうゆっくりしたからもう行くよ」

 そう伝えると、お母さんは、そう、とだけ言った。僕は持っていたランドセルを背負って玄関に向かった。

  「じゃあ行ってらっしゃい」

  「うん、行ってきます」

 玄関の扉を開ける。目の前には牛がいた。詳しく言うならナスでできた牛がいた。そうか今日は乗り物があったからゆっくりしてよかったのか。そう納得した。

  「じゃあお母さん行ってきます」

 玄関の方にいるお母さんを見た。お母さんは泣いていた。なんで泣いているんだろ?

 僕は牛に乗ると牛はゆっくりと歩き出した。ゆっくり、ゆっくりと。

 明日こそは時間通りに起きよう。そう考えながら牛に揺られながら家から離れていった。

 



 

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