第15話 友情の決着
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宮添 うたの は私と璃穏とそれなりに仲良くしていた子だった。クラスにも普通に馴染んでいたが、スクールカースト上位の子たちからは弄られ役として良く目を付けられていた。ある時、うたのと璃穏の二人が同時に弄られている時期があり、二人はその時に仲良くなったようだった。ただ、学校では仲良くするそぶりは見せず、学校外で仲良くしているようで、二人の間に私が入ることはなかった。
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闇と炎の攻防は熾烈を極めた。彼女の怒りの力が闇属性魔法を強化し、剣を振るうたびに地面がえぐれ、空間が震える。お互いの体を闇と炎の剣が掠め、擦り傷がどんどんと増えていく。傷口から飛び散る血が地面に撒かれ、口の中は鉄の味が染みてくる。
「糞みたいな人間は殺したって誰も困らないんだよ。馬鹿は風邪ひかないって言葉があるのって、結局バカは学ばないからなんだよ。いじめで自殺をしたって反省しないんだ。めんどくさいことしやがってとしか思わないんだ。だったらこの手で殺してやるのが、他の人たちのためになるんだよ。それを、この世界だと私でも実現できるんだよ。ほら、こんなに人を傷つけられる力があるんだから」
「でも、この世界でも殺人は罪じゃないの? もし罪にならないとしても、やっぱり人道的に殺人はやっちゃいけないよ」
「人道的にやっちゃいけないようなことの被害を受けてるのに、我慢するのはもう無理だよ。ねえ、美火、どうしても手伝ってくれないの? あんなに仲良くしてた私を見捨てるの?」
「……! 見捨てないよ! でも……」
「殺す以外なら考えるってことだよね。そっか、美火はそうやって八方美人でいて、誰かと対立するのが嫌なんだもんね。こうやって幼馴染の私と戦うのも、すごく嫌なんだよね。だから本気出さないで遊んでるんだよね」
「遊んでるわけじゃ……」
私の言葉は璃穏の闇属性魔法の打撃によって消される。動揺した私の隙を狙って発動された闇属性の拳は私の腹部をを捉え、後方へと飛ばされる。なんとか炎の翼を使って受け身を取る。
璃穏は間髪入れずに接近してくる。私は直感的に感じた狙いを遂行するため、大型の炎の鳥を具現化し、璃穏目掛けて飛ばした。璃穏はひらりと軽く躱し、剣を振りかざし、なんとか私は炎の剣で受け止める。
「その力ならもっともっとすごい力として出てくるよ。美火ならもっと使いこなせる。相手が私じゃなかったら、もっとうまく使いこなしてるはずだよ」
「そんな、私はそんな天才じゃないって――」
なんとか璃穏の剣を押し返し、今度は私が剣を振りかざす。しかし、即座に切り返した璃穏の剣に弾かれ、私は大きく体勢を崩した。
「悪いけど、本当に協力しないなら、このまま意識を無くして寝てて」
璃穏が追撃の剣を振り下ろそうとした瞬間だった。
「ごめんな璃穏、加減なしでやるから」
璃穏の側面から出て来た友馬の蹴りによって剣が飛ぶ。私は即座に炎属性の中魔法を発動し、璃穏を弾き飛ばした。そのまま継続して詠唱を始める。
「すべてを破壊する強靭なる炎の拳、ここに飛来し対象を灰へ誘え。『メテオアサルト・イフリート!』」
巨大な炎の拳は頭上より出現し、そのまま璃穏の方へと飛んでいく。璃穏は闇属性の防御魔法を展開し、そして拳に殴られ炎に包まれた。
「助かったよ美火。さっきは完全に璃穏はこっちに注意が向いてなかったから拘束が美火の魔法で壊れて抜け出せた。結構熱かったけど」
「ほんと、良かったよ! 熱いのはごめんって! なんともなさそうで安心したよ! 今のも助けてくれてありがと!」
私たちの会話を遮るようにして璃穏を包んでいた炎が消し飛ぶ。そこには息を切らした璃穏がいた。よく見るとすこし泣いているようにも見える。
「……本当に、本当に私の味方はしてくれないんだ。信じたくなかったけど、だめなんだね」
「璃穏……味方はしたいよ。でも、殺人は手伝えないし、もし本気でやろうとするなら、私は止めるよ」
「そっか、分かった」
璃穏が立ち上がる。そして、魔物を引き寄せていた闇属性魔法を消し、足元にも何かしらの魔法を発動した。
「それなら、止めてみなよ。何も準備してないと思ってると思うけど、そんなことはないからね。先にこの世界を旅して、色々と考えていたんだからさ。本気で止めてくれるなら、追ってきなよ。次は待っててあげないけどね」
そう言い残し、彼女は足元から湧き出る黒い靄に包まれ、そして消えた。私の心臓は冷たく鼓動を大きくさせ、私は唇を強く閉じていた。
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