第10話 短い旅路の中

――

 彼女は何日の間も、何回もカースト上位の女子グループたちとどこかへ行っていた。暴力を直接受けているように見えなかったが、何かしら辛いことをされているのは何となく分かっていたのかもしれない。

 ある日、私は彼女と2人で帰宅途中に公園に寄った日があった。そこで私は彼女に、何か困っていることはあるかを聞いた。直球の表現で聞けばよかったが、私にはそれが出来なかった。当然彼女は


「大丈夫。楽しいよ」


と、即座に答えた。明らかに用意されていた、本心を隠す言葉に、私は良かったと返すほかになかった。


――


 私たちは空を飛ぶ。風が心地よく私たちを通り抜け、鳥を追い越し目的地へと向かう。

私を真ん中に、友馬と璃穏は左右に見事に別れている。友馬は少し苦笑いを浮かべ、璃穏は全くの無表情でいる。二人は同じクラスでもあまり多く話すタイミングはなく、授業の内容やちょっとした話題を少し話す程度の、必要最低限のコミュニケーションを取るような、そんな関係だ。

 私は璃穏に気になっていることを聞くことにする。


「そういえば璃穏さ。この世界に来てから他のクラスメイトや知り合いに会ったりした?」

「うん、会ったよ。美火は?」

「こっちも何人かと会ったな~。元気そうだったよ! 一緒には行動しないってなったけどね! 他にも来てる人いるのかな?」

「そうだね。今まで旅してきた経験から考えて、多分私たちのクラスメイトは全員この世界に来てると思うよ」

「え、そうなの? もしかして全員と会えたの?」

「まだ全員は会っていないけど、色々と見て、聴いてると、そうなっていてもおかしくないかなって、推測出来るんだよね。まあ、私からしたら別にどうでも良いんだけど」

「そっか~それなら早くみんなに会いたいな~無事かどうか気になるしさ! ね、友馬!」


 私たちの話しを聴くことに徹していた友馬に話題を振る。彼はいつものように反応を返す。


「ああ、そうだな。あいつらも大丈夫かどうか気になるし」

「一番は幼馴染のうたのが心配、でしょ??」

「……まあ、そうだな。でもあいつはこういうサバイバルじゃしぶとく生き残りそうなタイプだと思うし、心配はしてないけどな」

「はいはい! そういうことにしとくよ!」


 私たちは束の間の雑談を過ごす。他のクラスメイトがこの世界に来ているのなら、無事を確認したい。一瞬の油断で命を落とす危険のあるこの世界は、この絶大な力を持っていても不安になるし、それは多分皆同じだと思うからだ。私は心にその想いを浮かべながら旅路を進む。そして、しばらく時間が経つ。


「2人とも、そろそろ洞窟の入り口に着くよ。付いてきて」


 璃穏がそう言い、高度を落しはじめ、私と友馬は、彼女の後ろを追うのだった。

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