第7話 再会

――

 私は幼稚園から璃穏と一緒に過ごしてきた、いわゆる幼馴染というものだ。家も近くでお互いの両親も古くからの友人同士で、家族ぐるみで付き合いがあった。

 彼女は静かに私の隣に立って、私の他愛ない話しに耳を傾けてくれる。高校2年でも同じクラスとなり、もはや登校を一緒にすることが当たり前になっている。

 高校になってからは同じクラスでもお互いの日常を大切にするためにあえて積極的な関りはしなくなり、璃穏の様子はあまり分からない状況があるが、話しを聴いている限りは元気にやっているようで、私は安心していた。控え目な彼女は良くぱしりにされることが中学校時代にあったからだ。そして今日も、同じ高校の同じクラスに行き、教室に入った途端、それぞれの世界へとシームレスに移行していくのだった。

――


 私は璃穏と静かに話せる場所を探し、いつもの自分の部屋のある家屋の屋根へと案内し、風にあたりながら、幼馴染と再会の言葉を交わした。


「久しぶり、璃穏! 元気だった? 怪我とかしてない?」

「うん、大丈夫だよ。美火も、元気そうでよかった。この世界に馴染んでるようで良かったよ。流石は美火だね。なんでも適応しちゃう」

「いやいや、まだまだ全然分かんないことだらけだよ! 目の前のことを全力でやってるって感じ! この前とかも魔物の群れがこの村を襲ってさ! 大変だったんだから!」

「でも、今日のこの村の様子を見ると、ちゃんと守れたんでしょ? すごいね、美火のその力」

「うーん。すごい、のかはよく分かんない。未だに現実感ないし、ほんと、直感に頼りながら手探りで頑張ってるけどさ~。それに、璃穏の方が力的にすごい気がするよ!」


 私たちがこの世界に来て間もないころ。この村に流れ着く前に、璃穏の力を何回も目の当たりにした。彼女の力は、恐らく私以上だろう。


「まあね。流石に熾天使ルシフェルの力だし、すごくないとヤバいよ。美火は、確か……」

「確か、熾天使ミカエル、って名前だったと思う。その名前を聞いた時の記憶が曖昧だから、多分だけど。私の知ってる一般常識で考えるなら、あの有名な天使の名前だったと思う」

「この世界に落ちて来た日に会った人が言っていた名前なんだよね。多分、私もほぼ同じ状況で聞いていたから間違いないよ。お互い、熾天使の力を借りてるんだ」


 璃穏はそう表現する。この力は借りているものだと。私は、彼女に疑問を聞いてみる。


「私たちよりも随分前にこの世界に来た璃穏なら、なんで私たちがこの力を持ったのか、そもそもなんで私たちがこの世界に来たのか、もう理由とか分かったりする? 私たちはこの村で生活するので精一杯で、全然調べられてないんだよね」

「――えっと、それは、まだ分かんない」


 彼女は控えめに首を振る。彼女は私たちよりも数か月も前にはこの世界にいたらしい。それならと思ったが、流石に分からない様子。その代わり、彼女は少し身を乗り出し、声を潜めて、私に提案した。


「でも、もしかしたらこの村が魔物の群れに襲われる理由、分かるかも」


 彼女の言葉に興味をひかれた私。そして、そんな私の反応を見てなのか、微かに笑みを浮かべる璃穏の顔は、どこか怪しく見えた。

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