第5話 貫く想い
「美火はセラフィムモードの準備をして ! 杏夏、駿と俺でゴーレムを牽制する!」
「分かった! あれ、でもそれだと美火が優勝しちゃう?」
「そうなるぞ! その作戦が必要になる前に俺が蹴り壊すぜ! 良いな、美火!」
「そうしてくれると嬉しいけど、無理しないでよ皆!」
私はそう言って内なる力のイメージを想像し、全身に力が巡り溜めるイメージを始める。ゴーレムは私が立ち止まった姿を見逃さず、岩の槍を作り出して私に投げ、接近する友馬達には岩の剣を地属性魔法で複数作り出し、2本は手に持ち持てない分はそのまま魔法制御によって攻撃する。友馬はダンスのような身のこなしで避け、駿は足に地属性力を宿して蹴りで弾き、杏夏は水属性でバドミントンのラケットを作り、シャトルを撃ち出すようにして岩の剣を弾く。私の方に飛んできた岩の槍も、3人が交互に属性魔法で軌道をずらしてもらい、直撃を防いでくれる。
ゴーレムの攻撃は動きこそ早くはないが魔法制御で動かす剣がゴーレムの攻撃後の隙を埋めるようにして動くため、3人は決定打を入れることが難しい様子だ。その中でもむしろゴーレムの攻撃をもらっている場面の方が多い。そして彼らはその攻撃の対してこの天使の力の防御魔法機構が働くので、仮に意識ある防御が間に合わなくても、自動で盾魔法が発動し、致命傷は負わずに済んでいる。ただ、これも万能ではなく、衝撃や痛みだけは防げない。特にノーガード戦法を取る駿は、すでに痛みを耐えるような表情となっていた。
「こいつ、結構タフだなおい! 全然動き止めらんねえぜ! 攻撃も見た目通りで重くて痛えし!」
「動きは早くないけど、浮いてる剣が隙を埋めるような感じで動いてくるし、スマッシュ決めらんない! これはこれで楽しいけど!」
「美火! あとどれくらいだ? ここで時間食ったらまた村が襲われる!」
「分かってるよ! あと少しだよ!」
そう。ここで時間を使ってしまったら、また村が襲われ、今度こそ村が全滅する。命の恩人である村をそんなことにさせたくないと、私は強く想いを抱いた。私は炎の卵に包まれ、背中から6枚の羽根が生えてくる。そして余りある力が体中を駆け巡り、ついには余りある力を解放するかのようにして、宙へと舞う。
弾けた炎の卵の殻は宙に舞い、それは天使の羽へと形を変える。私はセラフィムモードへとなった。
「みんな! そいつの隙を作って! 確実に当てたい!」
3人は私の声を合図に、すぐに連携体制を作った。縦に並び、先頭が杏夏、真ん中に友馬、最後尾に駿。杏夏がゴーレムの攻撃を撃ち返し、友馬の風属性でゴーレムに中、遠距離攻撃をして前に出る時間を稼いでいく。そして駿の射程圏内に入り、駿はゴーレムの顔面へと飛び、空中でボレーキックを顔面に食らわした。凄まじい衝撃でゴーレムの巨体は大きくのけ反る。私は、その魔法に対して挨拶と呼び出し、そして祈りの言葉を伝えた。
「裁き下す7つの剣、栄光と名誉を示し悪意を打ち砕け『コンデミングラム・ミカエル!』」
祈りの言葉は大魔法となり、私の周辺より出現した7つの炎属性大魔法の魔方陣から、炎で出来た剣が出現し、ゴーレムへと飛来した。その剣は無慈悲にゴーレムの体を四方八方より貫き、最後の1本が真上からゴーレムを突き刺して巨大な炎柱が発生、巨体をまるまる包み込み、そして跡形もなく燃やし尽くした。
私たちは約1か月前くらいにこの世界に来た。私たちのクラス全員が、この世界の呼ばれてしまった。そして、そのことが発端として、クラスメイト全員を巻き込んだ、各々の想い、怒り、憎しみが渦巻く抗争へと続いていく。
これは現実世界では出来ない想いを、ぶつけ合う物語だ。
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