第3話 4人の集結

 翌日、私と友馬は引き続き村の中で魔物の襲撃に備える。昨日の怪我を負った村人たちのひとまずの治療は終わっているが、戦闘に対する恐怖心までは癒せない。武器を持てない村人たちは、必死に他の方法を探して村を守ろうと奔走していた。


「昨日の魔物の群れは、多分まだ氷山の一角だと思う。感じるんだ。悪意の塊が、この村に魔物の群れを呼び寄せてるのが」

「え、それって、比喩表現? それとも本当なやつ?」

「そりゃ、比喩、のつもりだけどさ。なんか、この天使の力をもらってから、何かそういう黒いもやもやした雰囲気? っていうのが、何か感じるんだよね。美火は感じない?」


 実を言えば、似たような感覚はある。でも、本当に何となく、思い違いかもと思う程度のものだ。


「まあ、似たような感じはあるよ! でも、思い違いかもって思うくらいに曖昧な感覚だから、何かあんまよく分からないんだよね~。ほら、今もなんか、村の向こう側から黒い塊がこっちに……」


 私がそう説明した直後、再び村の鐘が鳴る。朝からなる鐘の音に、村人たちは恐怖と絶望の声を上げて避難を始めた。


「……もしかしたらガチかもね」

「早く行こう、美火!」


 私たちは再び村の出入口へと駆けていく。そこではすでに村の自警団たちが魔物と戦闘を繰り広げ、何とか水際で侵入を防いでいる状況だった。私はすぐにあのモードになるように集中しようとしたが、友馬からすぐにアドバイスが飛んだ。


「美火。確か、セラフィムモードはそんな長時間はなれないんじゃなかったか」

「え、まあ、確かにそうだね!」

「ひとまず今はその力は温存して、ここぞという時に使った方が良いと思う。これで終わるとも思えないしさ」

「ま、まさにそうだ! よし、それじゃあ、その作戦で行こう!」


 私は友馬の言葉を受け入れ、炎の剣だけを出現させて戦場へと入っていく。同じく一緒に戦場へと入った友馬は、私の背中を守るようにして戦いに投じていく。敵は昨日の魔物よりも弱い系統が多く、苦戦せずに難なく倒していけるが、昨日と違い数が多く、私と友馬だけではカバーしきれない。村の方にすり抜ける魔物は村の自警団たちに任せるしかない状況だ。出来る限り範囲の広い炎魔法を使い、魔物たちを焦がしていく。その後ろで、友馬は風属性で魔物たちを吹き飛ばし、引き裂く。そうして、漏れはあったが、なんとか魔物の群れの襲撃は落ち着き、村人たちは一息ついた。

 私も少し膝に手を付いて、息を整えた。


「はあ……はあ……。数で襲ってくるのきつい……」

「ふう。お疲れ、美火。確かに、結局体力は自前だからね。すごい力持ってても、持ち主が疲れて判断力も鈍れば、最悪やられる」

「ほんとそれね……。一人だったら多分、死んでたかも――」


 私は言葉の途中ではっと勘付く。ものすごい気配を持つ存在が来ていることに。私はすぐにその存在がいる方向に視線を向けた。その刹那、凄まじい速さでこちらに飛んでくる巨大な岩が目に映る。私たちは即座に魔法を出そうと構えたその瞬間、私たちの前に一瞬にして姿を現した2人の影が映り、次の瞬間ではその巨大岩が粉々に砕け散っていた。砕けた衝撃で私は顔を両腕で覆う。


「流石は駿! サッカー部のエースは違うな!」

「エースじゃないけど、ま、これくらいはな! 杏夏こそ、バドミントンの反射神経はやばいな!」

「まあこれくらいは鍛えられてるよ!」


 私は両腕を下ろして前で会話をしている2人を見る。そこには、昨日村に帰ってこなかった、クラスメイトの長谷川 はせがわ しゅんと、圓城寺 杏夏えんじょうじ きょうかが立っていた。


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