第2話 傷が治っていく

 魔物の群れが消滅した後、警戒に出ていた村人たちが戻ってくる。みんな傷を負い、苦しい表情をみんなしていた。その中で一人、無傷のまま重症の村人を運んでいる男子を発見し、私は声をかける。


「友馬!」

「ああ、美火、お疲れ様」


 私は友馬が抱えている村人を一緒に村の中へ運び、その人の傷を見る。どうやら狼、もといウルフに執拗に噛まれたのか、両足の肉が剥がれ落ち、赤々とした中に白い骨が少し見え始めていた。多分前の私なら気持ち悪くて嘔吐してたが、今はもう慣れてしまい、何も感じず話しを進める。


「これヤバいね……結構激しい戦闘あったんだ?」

「ああ、ばったり群れに遭遇して一気に乱戦になったよ。俺がいなかったら多分全滅だったかも」

「冗談じゃないのが怖いよね。さて、二人でやった方が良いよね! 早くやろうよ!」

「よし、えっと、手を重ねた方が良いんだっけ? まだ慣れないな」

「下心は今は考えない! ほら、手を貸して!」


 私はしり込みする友馬の手を無理やり取り、重ねたまま村人の傷口に掲げる。そして、頭の中で、回復だとか、治ってほしいとか、とにかくそういう気持ちを思い浮かべる。すると、私と友馬の手が緑色に輝き、その光は徐々に大きくなっていき、そして掲げた傷口を包み込む。濃い緑色の光に変化した後、その光は消えていく。光に包まれた傷を見ると、頭の中でイメージした通り、重症だった傷は全く綺麗に回復し、元から傷でも無かったかように、元通りに足は治っていた。私たちは同じようにしてもう一つの傷も回復させ、その人の治療を終えた。傷は治ったけれど、村人は今も痛みを耐えるように険しい表情を崩さない。私は申し訳ない気持ちを抱えながら、友馬を連れて他に傷をいやす必要のある村人の元を巡ったのだった。


 夜風が心地よい宿舎の屋上。空にはまばゆく輝く星々が輝いていた。今日は魔物の襲撃のあった忙しい一日だった。傷を癒す人数が多いと流石に疲れるので、今日はぐっすり眠れそうだと、星を見ながら考える。


「今日はいい天気だな」


 ふと、友馬の声が聞こえる。見ると、手にサンドイッチを2つ持って、天使の翼を使って屋上に上ってきた彼の姿がそこにあった。


「ほら、ごはん。食べてないだろ」

「サンキュ! それじゃ一緒に食べよ!」


 そう言って、私はサンドイッチを受け取り、彼を隣に促した。友馬は少し目が泳いだが、私の隣に座り、サンドイッチを頬張り始める。私も併せてサンドイッチを口にもっていき、また空に視線を戻した。私の目に映る、青々輝く比較的大きめに見える星。遠く故郷を見つめるように、その星を見ていた。


「二人は今日も外で見張りするって言ってた。だから、今日も村に帰ってこないよ」

「頑張るな~。いや、流石は運動系の部活部員って感じか。無尽蔵の体力までもらえなかったのは本当、謎なんだけどね」

「それは、まあ、そういうものなんじゃないか? 天使の考えることなんて、普通の人間に分かるわけないって言うか。そもそも天使のことも、現実に起きたことなのかも、未だに信じ切れないし」

「それな! ここに来て大体1か月くらいだと思ってるけど、ある程度生活には慣れたけど、状況についてはまだ全然理解追い付いてない! あー、いや、生活に慣れたから状況理解が出来るようになった、的な感じかな?」

「そうかも。この状況になった時はそんなこと考えるより、生きて生活することで精一杯だったもんな」

「本当にね! この力が無かったら、マジで死んでたかも。あと、璃穏りおに助けられた時もあったっけ。いまどうしてるんだろ」

「色々と気になることが多すぎるんだ。そろそろ生活に慣れたんだし、そこらへんも調べて行っても良いかも」

「そうだね! そんじゃ、リーダー、よろしく!」

「俺がいつリーダーになったんだよ。上に立つのは苦手なんだ。サポート系が合ってる」


 私たちはそんな会話を、サンドイッチを食べながらしていった。青く輝く星を眺めながら。

 

 

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