第30話 六つは開けすぎ
ピアス開けたいんだよね。事の発端は、スマホを弄りながら放った言葉だった。言った本人、つまりは私ですら言ったことを覚えていないくらい、何気なかった。
その一週間後、覚えのない宅配が届く。覚えのない訪問者は出ないと決めている私だが、ちょうど新しい靴を頼んでいたので、それだと早とちりしたのだ。だが業者から渡されたのは、なんだか小さなダンボールだった。
差出人には君の名前がある。心臓が跳ねた。サプライズなんて嬉しいじゃない。
ところが、中から出てきたのは五つのピアッサーだった。何を隠そう、耳にピアスホールを開ける器具である。それも五つ。え、五つ?
耳というのはそこまで大きな部位じゃない。それなのに、五つも穴を開けて良いものなんだろうか? よくよく見たら軟骨用、という空恐ろしい響きのものもある。そういえば君は、耳の上の方にもピアスをつけていた気がする。
私は自分の耳の上部分に触れてみる。コリコリしている。
怖いので軟骨は開けない。君は電話越しに残念そうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます