第29話 ごめん、やっぱ嘘
敬愛だろうが恋慕だろうが、誰かを強く想うとき、それは祈りなのだ。
そして祈りは清廉なものだ。ちょうど私が、雨の降る窓を眺めながら、その少しの晴れ間に君を考えているように。あ、カラスが鳴いた。最近出現し始めた野良猫も、しきりににゃおにゃお言っている。隣の家のおばちゃんが餌やりをしているという話を、親から聞いた。
悲しいのは、こんな日常を君に言えないことだ。どうでもいいことをどうでもよく綴りたい。雨が降っているんだけれど、窓から見える空が青いこと。カラスの声は意外と好きなこと。鳴き声は毎日聞いているのに、まだ猫の姿を見ていないこと。
言おうと思えば言える。今この瞬間も、駄文を考えている暇があれば、君にメッセージを送ればいい。君も待っているかもしれない。私のことが、君だってそこそこ大事なはずだ。
だから私はずるい人間だ。君がそこそこ私を想っていることを知りながら、私は君に会わない。話もしない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます