第10話 あんはっぴー後夜祭


 君に誕生日を祝って欲しかった。ただ、おめでとうの一言があれば良かったのだが、結果から言えばその一言すらなかった。

 仕方が無いとは思う。君は記念日とか忘れるタイプだったし、常に予定を詰め込んでいる忙しい人間でもあった。仲が良かった頃でさえ、君は平然と、翌日とかに祝いの言葉を送ってきた。じゃあ、諦めるにはまだ早いのかもしれない。

 対して私は、誕生日や記念日にうるさい人間だ。どうでもいい人間の誕生日すら覚えているので、いわんや君の誕生日。日付が変わった瞬間に、おめでとうと送るのは当然のこと、なんなら誰よりも早く祝いた過ぎて、前日に言うこともあった。クリスマスだってイブとか言う訳わからないものがあるのだから、君の誕生日にだってイブがあってしかるべきだ。

 自分の誕生日が過ぎてしまって、私は来月の君の誕生日を考える。祝われなかった私は、果たして君の誕生日をどうするべきだろう? 私はきっと、君と違って忘れられない。

 期日は君の誕生日イブまでだ。

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