鼓舞
この日の会話を改めて思い返すと、二人とも性格が悪いように思える。
正直会話内容をはっきりと覚えてるわけではないのだけれど、優月君が言っていたように先生に言えばいいだけの話だった。
そこを、私たちは【いじめっ子】たちにさらに痛い目を見てもらおうとしたわけだ。
「ほんと、我ながら性格悪いなぁ」
私は夕焼けを見ながらそう呟いた。
餌にはすぐにかかってくれた。
朝、私が席に着くと机の中に紙が入っていた。
「……きた」
少し周りを見ると、優月君と滝川君が無表情でこちらを見ていた。ちなみに春奈ちゃんはまだ来ていなかった。
その後の授業は心臓がうるさすぎて全く集中していなかったのは言うまでもない。
私へのいじめが始まってから一か月半ほど、優月君と屋上で出会ってから約三週間が経っていた。
わざといじめられに行くことを決意した私だったのだけれど、怖いものは怖い。
周囲の人が少なくなるまで教室で心を落ち着かせていると、優月君がやって来て「大丈夫?」と聞いてきた。
大丈夫なわけがないでしょと思わず笑ってしまった。
「それもそうか」
優月君は謎に納得していたけれど、正直もっと心配してほしかった。
教室に人も少なくなって、掃除当番と他数人になった。
そろそろ行かないといけなくなったみたいだ。
「行くか……」
私は深呼吸をする。
大丈夫だ私。
愉快ないじめも今日でラストだ。
私ならいける。
「頑張れ。無責任すぎるかもだけど」
「頑張るよ。絶対来てよね」
「もちろん」
別に表情は明るいものじゃなかったけど、その一言は私に少しだけ勇気をくれた。
私は教室を出て階段を上がる。
ここが正念場だ。
私はそこに向かうだけ。
あとは優月君たちが何とかしてくれる。
震える身体を鞭打って、私はゆっくりとドアを開けた。
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