面白い人

 優月君と出会った後、しっかりと風邪をひいてしまった私は二日間学校を休んだ。

 シンプルに長引いたのだ。


 私が二日ぶりに学校に登校すると、優月君が私のもとにやってきて話しかけて来た。

 正直話しかけられるなんて思ってもいなかったし、メリットもないと思ったのだけれど。


「ね、この前僕が上着やら貸さなかったから風邪ひどくなったんだろうしごめんな」

「……へ?」


 何を言っているのでしょうこの人は。

 明らかに数十分もぼけっとしていたからひどくなっただろうに、まさか謝られるとは。

 私は驚いて数秒間フリーズして、そして笑った。


「ふふっ……や、いいよ。あれは確実に私が着替えもせずに呆けていたからだから。だから、大丈夫」

「そう?なら良い……くもないか」


 この人はちょっと抜けてるのかななんて失礼なことを思いつつ、私は久々に人前で笑った。


 優月君は表情があまり変わらないけど、発言が面白いタイプだった。

 まあ、笑うときはしっかり笑うし、感情が薄いわけではないみたいだけれど。


 さっきのようなどことなくズレてるような発言だったり、辛辣なツッコミだったり。

 どこから学んだのかわからないワードセンスだったり、普段の雰囲気からはあまり想像はつかないけれど話していて楽しい。

 難点といえば得意じゃない話題に対しての反応は薄いことだろうか。

 ……わりと大きい。


「……面白い人」


 優月君となんてことない会話をした後、私はそっとつぶやくのだった。

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