第31話

 あおきい 白雲しらくもかすめ ぶいのち


 暖かい昼下がり、青い空に白い雲が浮かんでいる。その風景に、鮮やかな黄色の蝶が一匹、ひらひらと舞っている。はかない命であるが、天然自然のなかで小さな命が

息づいている。感動することのない日々を過ごしていたが、今はちがった。



 うめかおる すぐしの れつにつき


 公園のなかにある紅梅白梅も花をつけ出した。かすかに香りもするが、月に二回の炊き出しに、ホームレスたちは我先に列にならんだ。私も、梅の香りよりも炊き出しの飯の匂いに誘われ、梅の香の風流など消し飛んでしまった。



 はなはまだ みきくろぐろと さくらかな


 樹齢80年はありそうな桜の木は、太い幹を黒いガサガサの樹皮で覆って鎧のように何かから守っている。または、傷ついてガサガサの樹皮になったものか。どちらにしても、痛ましい感じを私に与えている。そして、耐えて咲く花の見事さよ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る