第30話

 はるぐ テントのなかに 地虫じむし


 ようやく、公園のまわりも暖かくなる。春を感じるのは、春風のそよぎも、そうであるが、やはり、命の営みに接するときである。青テントのなかにも、春を知らせる小さな命がある。目で、それを追うと、生き物の奇蹟を実感できる。



 テントわき 蝌蚪くわと小池こいけ にぎやかに


 青テント小屋のよこにできた小さな水溜まりにも、いつしか小さな命が息づいている。青蛙の卵が孵り、いくつものオタマジャクシが小池のなかをうごめいている。それらはやがて蛙になり、旅立ち、そして、親蛙となって小池に帰ってくるだろう。



 まんし かえる巣立すだちち われもまた


 小さな命ですら懸命に生きている。まして、私はこれだけの躰を持ちながら、何も成せないのはおかしい。何事か成すためにも、一歩踏み出さなければならぬ。そう、蛙の巣立ちを見守りながら、しずかに決意をする。

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