第28話

 山焼やまやけの 故郷こきょう山河さんが ゆめにみて


 拾った新聞を見ると、どこかの山岳の写真は、夕陽に照らされて赤々としている。幼い頃に見た伊豆の岩山を思い出す。故郷は、もう帰れない場所になってしまった。ぽっかりと、そこだけ行けない土地になった。



 小禽ことりき 山茶やまちゃみし 野点のだてかな


 貧乏しても、風流はしたい。どうせ、なにをどうやっても同じなら、風流を気取っていたい。自生している茶葉を摘んで蒸す、そして、揉んで乾かす。抹茶ではないが緑茶を喫す。青い空に小鳥が飛んでゆく。心に掛る涼やかな声である。



 ネオンがい 原色げんしょく嬌声きょうせい 女闘鶏めとうけい


 暗い夜道を、何か落ちてはいないかと、下ばかり見て歩いていると、向こうで争う声がする。時刻は、深夜二時である。声は鋭く高い。つかみ合う気配がする。街灯に照らされて二匹の女が浮かびあがる。

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