第26話

 のこめし あしのでそうな 春日はるひかな


 ようやく寒い冬が終り、暖かな陽射しが眩しい。テント小屋のなかも暖かくなり、昨晩の弁当の残り飯もあしが出そうな陽気である。こんな日は、公園の芝生に寝転がって日光浴にいそしみたい。青い空を仰ぎ、白い雲を、目で追いたい。



 月朧つきおぼろ あやしきこえに テント


 春の夜は、とかく秘事ひめごとが盛んになる。このテント村も例外ではない。小金を手にしたホームレスたちが立ちんぼの女を買って、テントのなかに連れ込んで励んでいる。そして、嬌声きょうせいに合わせてテントが揺れている。人の営みに上下はない。



 噴水ふんすいは れぬままにぞ はるみず


 東京の春に、雪解ゆきどけはなかった。東京に、田舎の風雅はない。水道水は一年中流れ、枯れることはない。実利一辺倒のつまらなさである。公園の噴水を眺めて、漫然と思う。こうう嘆息は都会ならではか、それとも・・・。

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