第25話

 公園こうえんの 足許あしもとみえず 大霞おおがすみ


 春の早朝、一間いっけん先も見えない霧がでている。自分の足もとも見えないぐらいである。昼には、晴れるだろうが、不便である。霧がでると、すべてが湿しめって、洗濯物も乾かない。実利的には良いことはない。しかし、こんな日もあってはいいと思う。



 アブれては 春風はるかぜいて てんをみる


 日雇いの土工仕事にありつけず、とぼとぼと公園の小屋まで歩く道のりは遠かった。繁華街では、活気のある人々が他人には無関心に動きまわり、すれ違っている。

日当にっとうをあてにしていたので、手元には幾らの金もない。空だけは、青い。


 

 春風はるかぜや 小銭こぜにもないと あるきおり


 まったく金がないと、いっそ偉いような気がしてくる。勿論、これは錯覚であるが、無敵になったような高揚感がある。もう、これ以上したがないので、持っているものは暴力しかない。金を持つと守るが、無いと攻めるしかない。

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