第24話

 はるや ときのながさを はかりおり


 春のよい、ひとりテント小屋のなかにせていると、なんとなく、過去のあれこれが思い出されて、胸が苦しくなる。後悔がないわけではない。後悔していないと自分に言い訳しないといられないときもある。



 テントにも いえ蜘蛛くもがおり はる


 こんな、小さなテント小屋のなかにも蜘蛛がいる。家のなかに居る種類の蜘蛛だろうが、蜘蛛にとっても外より内がいいに決まっている。家のなかは外より安全である。安全は人間だけではない。虫のような小さな命も守ってくれる。



 老犬ろうけんの あるきながらの 放屁ほうひかな


 ときおり、公園のなかを散歩に連れられている犬を見ると、犬のなかには草臥くたびれた老犬もいる。つまらなそうに歩いているが、ふと、老犬の顔が、だらしなくゆるむときがある。そんなとき、こちらが勝手に粗相そそうをしたと想像している。

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