第19話

 散歩道さんぽ ふりむきつつも あるいぬ


 秋の、公園のなかの道を飼い主につれられて、嬉しそうに歩く小型犬がある。気ばかりせき、首輪のひもを張って、先を歩く犬は、ときおり、飼い主の顔をうかがう。犬は飼い主に忠実である。そして、悲しい生き物である。喜びにも悲しみが含まれる。



 ただきているだけでいい夕時雨ゆうしぐれ


 晩秋、土工の仕事帰りに急な雨に降られる。傘がないので、近くの焼き鳥屋に入って、雨やみを待つ。雨やみとっても、それは口実で、ただ酒が呑みたいだけである。ひさしぶりの酒は疲れたからだみわたり、いっとき、すべての屈託くったくをわすれる。



 人生じんせい不味まずくなってうつまらなさ


 何事も、旬はある。人間にも、それぞれの人に旬があり、それをうまくとらえないと、つまらないことになる。私などは、いつでも旬をとらえそこねて、今日まで来てしまった。挙句は、青天井に、草の臥所ふしどである。

 

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