第16話

 かべのある まだしあわせと 野宿者のじゅくもの


 ホームレスとっても、テント小屋や段ボール紙の寝床のあるホームレスはいいほうである。新参のホームレスは、それらの寝床がなく、公園の隅の木々が茂る暗がりに身をひそめるしかない。目立つところにると、容赦のない迫害を受ける。



 れものがかわる美味おいしくいただける。


 炊き出しで出される味気ない発砲スチロール製の器より、陶磁器の器で食べるご飯は格別である。やっと、まともな人間に戻れた気がする。発砲スチロール製の器だと低級な、使い捨ての、無用の人間の烙印らくいんを押されているようで、悲しい。



 寒々さむざむと 耳朶じだおくまで 春一番はるいちばん


 寒さ、暑さに格差はない。建物の中と外ではちがうが、道を歩くと、貴賤きせんの別はなく、寒いときは寒く、暑いときは暑い。これは変わらない。路上生活をしていても、そうう者にも、春風は吹く。初春の冷たい風は感じられるのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る