第15話

 靴破くつやぶれ 春寒しゅんかんのなか 西にしひがし


 炊き出しの出る場所をもとめて、街のビル群の通りを幾つも抜けて、西へ東へ歩きとおす。五時間以上歩くと、脚は棒のように疲れ、靴の破れ目からは初春の冷たい風がみてくる。疲れ切った膝をさすりながら、いったい何故なぜ歩いているのかわからなくなる。



 煤払すすはらい テントのかべを じっと


 ブルーシートのテント小屋のなかも、年末には「煤払い行事」として埃取ほこりとりをする。うっすらと汚れたシートを濡れたタオルでくと、真っ黒になる。一見汚れていないように見えても、案外汚れているものだと思う。また、一年が経った。



 あおテント 草取くさとりだけの 大掃除おおそうじ


 年末の大掃除とっても、簡単に小屋のなかを整理して、シートの汚れを落とし、そして、小屋のまわりの草を、気持ちばかりに取るだけである。草刈り鎌で、草をぎ払うと、気持ちいいぐらいに草がれる。いっとき、屈託くったくが晴れるようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る