第12話

 元旦がんたんや 蛇口じゃぐちみずも こおりつき


 うっかりしていると冬場は水にも困ることになる。東京でも、ときおり公園の水道蛇口が凍って水がでなくなる。屋外だから凍るが、公園のトイレの蛇口も凍ることがある。つくづく路上生活の悲哀を感じるが、身から出た錆とわらうしかない。



 元旦がんたんや いこともなし わるいこともなし


 幸せは、何気なにげないものである。普段と変わりないとう奇跡は、ほんとうに有難ありがたいものである。からだが動いて、目も見え、耳も聞こえ、まあまあ元気でいられることは、そうそうあることではない。そううことが、五十路いそじをこえると身にみる。



 懐手ふところで まちさわがしく 初荷はつにかな

 

 ジャンバーのポケットに手を入れて、ぶらぶら街を歩く。早くも店を開けている所がある。路上生活者としては店の様子よりも、ひたすら路面が気になる。なにか金目かねめの物はないかと目をらすが、目ぼしい物はない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る