第11話

 まだかまだか げることない 乞食餅こじきもち


 除夜じょやかねを聞きながら、空腹をおぼえて、早くももちを焼く。カセットコンロに置いた魚焼き網の上の餅は、気ばかりせいて、始終餅をひっくり返しているので、餅は焦げることもない。



 元旦がんたんや 昨日きのうのつづき 明日あすもまた

 

 新年は、気持ちを新たにして迎えたい。一日いちにちを大切にしたい。しかし、現実は、毎年の大晦日おおみそかも元旦もおなじ日の繰り返しであった。これではいけないと、何度思ったことか。来年は、来年こそはと念じてきたが、何十年も繰り返してしまった。



 元旦がんたんや しもない 日本晴にほんば


 清々すがすがしい空気、寒いと言えば、寒いが、空は青々と晴れている。元旦のテント村は、ひっそりとしている。騒いでいる者はいない。テントのなかで寝ているのかもしれない。空腹で死んだふりをしている者は多い。

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