第10話

 大晦日おおみそか のこりして しるわん


 いよいよ今年最後の炊き出しである。なんとか今年も生きられた。来年も、生き続けたいと思う。しかし、生きてゆくにしても、生きている内容が重要である。今年のように漫然と、その日暮らしではらちはあかない。テント村からの脱出を考えねばなるまい。



 だんなくて かじかむ手足てあし 大晦日おおみそか


 日雇ひやと土工どこうの仕事も年末の早い時期に終了し、手許てもとの金もほとんどない。来年の仕事はじめまで、一週間以上ある。買い置きの使い捨てカイロも切れて、どうにも我慢ができなくなるとカセットコンロの火でだんを取るしかない。



 またひとつ としかさねるかと 大晦日おおみそか


 人生五十年、これだけ生きられれば上等である。・・・しかし、あたりを見回みまわせば、ブルーシートの小屋のなかに雑然とした日用品とゴミばかりがらかっている。そううなかに自分はすわっている。どこかで、何かがちがったはずだ。


  

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