メックダヌルズ・ウォー その②

 きのみは内向的かつ陰キャである。


 まず、飲食店に入るという行為自体が苦手である。


 なので、入ろうと決めても、目的の店の前を三往復はしている。


 なのに、それを悟られたくない超見栄っ張りである。


 なので、何となく店を選ぶような雰囲気を出しつつ、



「ここにしようかな~、ふふふ~ん、どおっしようかな~」



 みたいな演出をしてしまう、度し難いダメダメなやつである。


 コロナが流行ってからは、それ自体は記憶から抹殺したいほど嫌な思い出も多かったが(現在進行形)、ひとつだけいいことがあった。


 各店舗がデリバリーを始めたこともあり、お店に入らなくても、食べられるようになったのだ。


 味はちょっとは落ちるかもしれない。


 だが、これはきのみにとってとても幸せなことだった。


 だが、コロナ禍が一服してからというもの、デリバリー環境は一変した。


 そして、今のこの店舗インに繋がるのである。



 え? メックダヌルズ(※英語発音をカタカナで出力しています)は、昔からデリバリーやってたし、今でもデリバリー全盛期じゃんか?



 ……。


 昔はね、してくれてたの、デリバリー。


 でもね、さっきアプリ開いたら「ただいま一時的にご指定のエリアへの受付を停止しています」って。


 そう、書かれてたの。うっうっうっ。



 というわけで、きのみは覚悟を決めた。



「やってやるにゃ……、みんながSNSでガン上げしてる【お月見日和ばーがー】ボクも頂くにゃ!!!!!!!」



 店舗に入るとき、ものすごく小さな声で、そう叫んだのだった。

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