日常のとあるⅣ メックダヌルズ・ウォー

南方 華

メックダヌルズ・ウォー その①

 人には、やらねばならぬ時がある。



 半年前から準備していたイベントの初日。


 人生に一度しかない大会の試合。


 何百億のお金が絡むプレゼン。


 絶対にミスが出来ない手術オペ


 

 たとえ体調が悪くとも、気乗りしなくとも、どうしてもやらねばならぬ時がある。


 そして、本作の主人公である『やまだきのみ』にとって、今がその時であった。



「ボク、やるにゃ……!」



 握りこぶしに力を入れすぎたため、爪の当たっている部分が白くなっている。

 

 だが、きのみはそれに全く気付かないほど、緊張していた。


 黄昏どきを過ぎた空は、宇宙の深い青が広がっている。


 目の前にある、角が丸いMのイニシャルが特徴的な店舗の中では、人々が列を成し、あるいはイートインでテーブルを囲っている。


 時は、満ちた。



「いくにゃ……!」



 右手に右足、左手に左足を繰り出しつつ、きのみは陽キャ全開にライトアップされた店舗へと入っていくのだった。

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