番外編② シビュラシステム(サイコパスシリーズ):ツッコミどころ満載のディストピアの支配者

 番外編も無事に二回目を迎えました(終わらす気無ぇなコイツ)。


 今回はアニメ「サイコパス」の世界を支配する治安維持システム「シビュラシステム」と、その末端機械であるハンドガン「ドミネーター」を取り上げてみたいと思います。


 まずは恒例の作品紹介から。

 近未来。世界中が紛争と混乱にある中、日本だけは独自の治安維持システム

『シビュラシステム』を開発、実用化する事で変わらぬ平穏を保てていました。


 しかしそれは警視庁公安局にあるスーパーコンピューターによって、国民一人一人の精神状態を完全に把握し、もし誰かが心身に異常をきたし、『犯罪を起こす可能性が高い』と判定されればたちまち公安局の刑事が急行して確保、逮捕、果ては射殺まで行うというシビアなものでした。


 つまり、犯罪を犯していなくてもシビュラシステムにそう判定されたら無条件で犯罪者扱いされ、良くて更生施設送り。悪ければその場で射殺されるというなかなかのディストピアな世界観の物語なのです。


 その際の犯罪を起こす可能性を示した数値、『犯罪係数』を、作品のタイトルにもなっている『サイコパス』と称しています。


 そんな中、主人公の常守 朱つねもり あかねちゃんが、犯罪者を取り締まる側の公安局員、つまり刑事さんに就職し、犯人を追う猟犬的立場の『執行者』たちの濃ゆい面々と共に、犯罪とシビュラを否定する者たち、そしてシビュラそのものと相対していくハードボイルドストーリーとしての性格を持つアニメ作品です。


 最初に行っておきます。私はこのアニメ作品にドはまりしてます。


 独自の世界観をまず構築して、それに対して主人公や仲間たち、そして犯罪者がその世界の中で良きに付け悪しにつけ活躍していくストーリーは魅力たっぷりで、大変面白くかつ色々と考えさせられる、オススメの物語になっております。


 なので興味を持たれた方はここから先は読まずに、是非アニメのご視聴をオススメします、ここから先はネタバレてんこ盛りなので、読んでから視聴すると面白さが半減してしまうでしょう、それはあまりに勿体ないので……。



  ◇        ◇        ◇






 もうご視聴されましたよね? ここからはネタバレ山盛りですよ。






  ◇        ◇        ◇






 さて、件のシビュラシステムですが、先述の通りちょっとヒドイというか、かなり理不尽なシステムであるとも言えるのです。

 そりゃ犯罪を犯す前から、犯罪を犯しそうな人を片っ端から捕まえてたら犯罪は起きようがありません。

 でも逆に言えば、サイコパスの数値が高いというだけで、無実の人間が大勢しょっ引かれているわけです。これじゃ逮捕された人はたまったもんじゃないでしょう。


 さらに悪いのが、そのシステムが判定し見つけ出すのは、その個人の精神状態なのです。つまり普段穏やかな人でも、何かの拍子に精神状態が悪くなればたちまち犯罪者扱いされてしまうのです。


 事実物語の中で、テロリストが大勢の民衆を人質に取り立てこもるという事件が発生しました。この犯人なんとシビュラに引っかからない特殊な手術を施されており、次々と人質を殺傷していったにもかかわらず、シビュラシステムは事件発生を把握できませんでした。

 それどころか大勢の人質の方が、目の前の惨劇にパニックになってサイコパス数値を上昇させてしまい、駆け付けた公安局員に次々と射殺されるというシャレにならない悲劇を起こしてしまったのです。


 システムと数値に頼り過ぎた悲劇と言えばそれまでですが、この有様じゃ明らかに問題ありですよねぇこのシステム。

 

 しかもかなり初期からこのシビュラ判定に引っかからない特殊な人間がいる事が分かっていたのです。にもかかわらず何の対策もせずに放置していたのには、また深い事情がありました。


 このシビュラシステム。スーパーコンピューターなどというのは大嘘で、実際には前述の『シュビラ判定に引っかからないような、精神を乱さずに犯罪行為が出来る』特殊な人物を狩り集めて、その人間の脳だけを取り出して培養液に漬け、それらの脳の合議で犯罪者判定を成していたのです。

 感情的にならずに客観的に犯罪を判定できる異常者の会議によって、この世界の犯罪の可能性の芽を摘み続けていたというわけです。


 あるいはそれは非常に有効な手段なのかもしれません。物事の判断に私情や思い入れを込めない思考を持つ者達の合議なら、限りなく正解に近い答えは出せるでしょう。


 理不尽に殺される人は確かにいるが、それに頼らざるを得ないほど世界は混沌としている。そんなジレンマの中であえぐあかねちゃんの心理状態には、ぐっと引き込まれる魅力があります。


 さて、本題に行きましょう。

 このシビュラシステム、発想だけを見るならまさに悪魔のシステムといえるでしょう。しかしアニメで見ていると実にネタ的なツッコミ所満載で、面白おかしい要素まで持っているのです。


 公安局の最深部、このシビュラシステムがあります。つまり選ばれた者達の脳ミソが大量に集められ、永遠ともいえる思考と審判を繰り返しているのです。

 ケースに収められた剥き出しの脳ミソの数々は、映画「ルパンⅢ世」のマモーや、シューティングゲーム「グラディウス」の最終ボスを連想させます。


 ただ……移動してるんですよ、この脳ミソ達。


 まるでクレーンゲームのアームのような物で掴まれ、つまみ上げられて別の所に移動し、そこでまた台座に乗せられている、そんな麻雀の洗牌のようなごちゃごちゃした動きで常時あっちへこっちへと移動し続けているんです。


 いや、電波とか、せめてコードとかで通信しろよ。無理に動かさんでも、舞台は近未来なんやから(笑)。


 落 と し た ら ど な い す ん ね ん !


 いや、クレーンゲームのようなアームで動いてるからついつい落っこちる様を想像しちゃうんですよね。


 ウチの嫁さんにそれを言ったら「アレは演出やからツッコんだらあかん!」と窘められました。



 気を取り直して次に行きましょう。

 このシビュラシステムと直結した、公安局員が使用する『ドミネーター』というハンドガン。相手に狙いを定めるだけで相手のサイコパス数値を判定し(正確にはデータを送ったシビュラの脳ミソたちが判定)、その数値によって発射する弾丸を入れ代え、見た目にもカッコよく変形して臨戦態勢を取ります。


 数値が100以下なら弾は発射されずトリガーはロックされます。100~300の間ならドミネーターは電気銃テイザーガンと化して相手を感電させて無力化します。

 しかし相手の犯罪係数サイコパスが300を超えた時には必殺銃のエリミネーターへと変化し、弾丸を撃ち込んだ相手を体内からという恐ろしい効力を備える……。


 銃からケンシロウの指でも発射しとんのかい(笑)。うわらば!


 だーかーらー近未来でしょ? 必殺の毒薬弾でもいいし、前述の電気銃テイザーガンを確実に心肺停止するレベルまで上げてもいいじゃん。

 死体や現場を片付ける人達の身にもなってやれってーの。粉々で血も肉も骨も飛び散って肉塊すら残らない状態じゃ、身元の確認やお葬式もちゃんと出来やしねぇし。


 あと、この銃ドミネーターって前置きが長いんですよね。銃を取り出すときにもいちいち網膜で本人確認して、それを銃が唱和してからようやく使えるようになるし。相手に銃を向けた時も、サイコパス認証>変形してからようやく発射できるようになるし。

 もたもたして逃げられたり反撃されたらどーすんの?


 あとサイコパスが100以下の人には「執行対象ではありません、トリガーをロックします」って音声が流れるんだけど……いやロックしなくても何も発射できなすればいいじゃん、状況によって色んな弾を打てるんだし、そのくらい出来るでしょ?


 さらに最大のツッコミ所としてカメラが、つまり録画機能が付いてないんですよね。

 公安局員が犯人に対する執行の決定的瞬間を録画してない近未来兵器……おかげで主人公が犯人を捕り逃すのみならず、友人を殺害されてしまい、その状況で犯人を立証すら出来ていないケースさえあるって……。


 嫁さんにそれらのツッコミ入れたら「そこは考えたらあかん、感じるんや!」と力説されました(苦笑)。



 ま、まぁ細かいツッコミは入れましたが、本作が名作アニメである事は間違いないので、これを読まれた皆様も是非、ご視聴する事をオススメします。


 ……あれ? ここまで読んだ人はネタバレ忠告済みで、アニメを視聴していない人はいないはずです……よね? よね?

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