第8話
「今年成人を迎えた16歳ですわ。あぁ、他にも執務室の椅子がいくらふかふかで寝心地がいいと言っても眠ってはいけませんと、執務室を逃げ出して木登りをしてはいけません。後は、侍従たちとの鬼ごっこももうやめるのですよ?わたくしがいなくなったからと言って、自由気ままに過ごしてはいけません。執務をしっかりとこなし、好き嫌いせずものを食べ、濡れるのが嫌でもちゃんとお風呂に入って、楽しい本があったとしても12時になる前にお布団に入ってちゃんと眠るのですよ?と言わなくてはなりませんでしたね」
「もぅ、」
「?」
「もう、やめてくれえええぇぇぇぇぇぇ!!」
びゃーっと泣き崩れたディートリヒに首を傾げたヴァイオレットは、よしよしと彼の頭を撫でる。
「男の子だから泣いちゃいけませんと王太子としてもっと相応しい行動をとってくださいも言わないとダメなのですか?ほら、しゃんと立ちなさい」
にっこりと笑ったヴァイオレットは、くるっと周囲を見まわし、明らかに焦った表情をしている男を見つけた。
(あらあらまあまあ、司祭さまのお顔色が優れないわね)
ディートリヒの愛おしい人であり、聖女であるマリーナの育ての親。
ヴァイオレットは今まさにそのことに気がついたと言わんばかりに顔を驚きに染め、彼の方に向かう。
「まあ!司祭さま、お顔の色が………!!早くご帰宅なだった方が………、」
「い、いえいえ、私めのことなどお気になさらず。それに今は馬車を使いに出しておりまして………、」
「まぁ!それは大変ですわ。どうぞわたくしの馬車をお使いになって」
(そう、わたくしが何度も何度も殺された馬車を)
ヴァイオレットは自分付きの侍女に彼を馬車まで送るように命じ、これで一安心だと嘆息する。
(あのお馬鹿さんのことだから、足がつかないようにと自分がその馬車に乗せられた時のことなんて考えていなかったでしょうね)
そもそも黒幕があっているかどうかも怪しいのだが、ひとまずここ数年見ていたところあの司祭さまは野心家っぽいので、排除しておくに限る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます