第5話

 73回目、74回目と似たような死に方をして、焦れたヴァイオレットは75回目の人生で窓を全開にして光魔法で外に灯りを放った。


「はあ!?」


 そして、視線の先に見つけたものにヴァイオレットは大きな悲鳴を上げて、漆黒に飲まれた。


「いぃぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「と、取り押さえろ!!ヴァイオレットが乱心だッ!!」


 76回目の人生、75回目の人生で気がついてしまった馬車の行き着く先に、ヴァイオレットはループしたのにも関わらず、大声で叫んでしまった。淑女失格だ。その後、ヴァイオレットは王宮の客室に通された。心を落ち着けるためにもと思いメイドが淹れたお茶を飲んだのを最後に記憶が途切れたところを見ると、ヴァイオレットは毒殺されてしまったのだろう。


 77回目の人生、ヴァイオレットは76回目の人生の経験を活かし、発狂したふりをして思いっきり叫んでやった。 王宮の客室に潜り込んだ後は疲れたふりをして寝たら、目が覚めたら78回目の人生に突入していた。


 78回目、79回目、80回目、81回目、82回目、83回目と叫んで叫んで叫びまくって、王宮の客室にて過ごしたが、結局はどれも殺された。逃げるという選択肢は3回の部屋で扉と窓の前に見張りがいるという点から無かった為に、暗殺者に狙われても魔法を展開しての泣けなしの抵抗しかできなかった。


(この作戦は諦めるべきね………)


 84回目以降は、威風堂々とした佇まいで色々な罵詈雑言を高潔に吐いてみた。嘘も間違ったことも1度も言ってないが、結局はディートリヒによって地下牢に繋がれた。誰も庇ってくれなし、拷問をされることもあり、1番碌でもない人生だ。

 けれど、何故かあの犬系王太子ディートリヒにガンガン文句を言えるのが気持ちよくて、積年の恨みつらみを言いまくった。何故か側近たちが同調してくる回もあってなかなかに楽しかった。


 99回目の人生は特に愉快だった。

 近衛騎士団長の息子、宰相の孫、魔法師団長の甥、そして何とディートリヒの愛おしい人マリーナまでもが一緒になってディートリヒの悪口を言いまくて、みんな仲良く地下牢に繋がれて拷問の末に殺された。


(あぁ、本当にもう満足だわ)


 ディートリヒに言いたかった恨みつらみはちゃんと全部つつがなく言えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る