第31話 暴走ストーカー
さて、どーすっかなぁ、あのストーカー
オレは椿を構えてストーカーの男を見据えるが、明らかに暴走してる奴に無作為に突っ込んだりしない。そんなことしてもパワーで押し切られるのが目に見えるからな。
「GYAAAAAA!!!」
ストーカー男は、悲鳴とも思えるような雄叫びを上げてこちらに突っ込んできた。
「そっちから突っ込んでくんのね!!?」
『神威!構えよ!』
「え?あぁ、アレやるのか」
オレは上段の構えを取り、ストーカー男を待ち受ける。
「『桜花流 枝垂桜』」
ズダン!
オレは、ストーカー男の攻撃が当たる前にこちらから攻撃し、ストーカー男を唐竹から切りつけてやった。
「GA…」
「よしっ、イッパツくらわせてやったぞ」
これでこいつも倒れて一件落着だろうと思っていたが、ストーカー男は踏ん張りを効かせて倒れそうになる体を持ちこたえていた。
「マジで!!?倒れねぇの?アレで!!?」
『予想よりタフじゃのう、これは根気よく行くしかないのぉ』
うーわめんどくせぇ
オレは構えを取り直して、もう一度攻撃を試みる。
「『桜花流』」
オレは地面を強く蹴って、一気にストーカー男との距離を詰めながら腰を大きく捻る。
「『薇』」
ズバン!
オレは横薙ぎでストーカーの胴体目掛けて切りつけてやった。
よしっ、今度は結構いいのが決まっただろ。
これなら少しくらいあいつも怯んだり
「GAAAA!!!」
やっべ、怯むどころか怒ってらぁ。
「ツバキ アイツ オレ コワイ」
『なぜカタコトなのじゃ』
だって今の薇って、結構深めに斬りつけたのにあのダメージなんだよ?絶対ヤバイじゃん。チョ〇パーのモン〇ターポイントじゃないんだからさぁ。
ストーカー男は刀を振り上げて真っ直ぐオレに向けて振り下ろしてきた。
オレはそれを防ごうと椿を頭上に上げる。
『防いではならん!!』
「は!?」
ズドン!!
男の攻撃を防いだオレだが、あまりの一撃の重さに思わず膝をつき、足下の地面がひび割れる。
おっも!!ナニコレ!馬鹿力にも程があんだろ!
「やっべ、コレ……力抜いたら…潰れる」
『これは、まずい!』
「GAAAAAA!!!!」
椿で男の刀を防いでいるオレは、完全に胴体ががら空きで男が足でオレの腹を蹴り飛ばす。
「ぐぼぉぁ!!!」
『神威!!』
オレは地面に身体を擦り付けながら、後ろに吹っ飛んだ。
「ゲホッ!ゴホッ!おえぇぇっ」
ドスドスドス!と音が聞こえて前を向くと、男が全力でこちらに突っ込んできていた。
やばっ、速すぎっ…
『逃げよ神威!』
「ハァハァ...無理っ」
そのまま男の体当たりで、オレを後ろのブロック塀にぶち当ててきやがった。
「がっ……」
『神威!』
「GYAAAAA!!!」
雄叫びを上げる男を前に、フラフラとオレはもう一度立ち上がる。
「こっの野郎、ボコスカにしてくれやがって」
『まだ行けるかの?神威よ』
オレは口に溜まった血を、地面に吐き捨てる。
「たりめぇだよ。こんなにボコボコにしてくれた借り、100倍にして返してやる」
『やる気になったようで何よりじゃ』
絶対泣かす!
オレは椿を強く握り直して、やつの真上に飛び上がる。
「『桜花流 鬼灯』」
ドスッ!
「GUUU」
オレが椿をやつの左肩に深く突き刺すと、男が顔をしかめる。
ガッ!
「!」
「GAAAAA!!!」
男が右腕で刀を突き刺したままのオレの腕を掴み、痛みなどものともせずにオレを振り回してきやがった。
「うおおっ!!?」
ブォン!!
そしてオレを放り投げ、オレに向けて刀をぶん投げてそれを追いかけるように走り出す。
『神威!防げるか!』
「行けるっ!」
オレは空中で体制を立て直して、椿で飛んできた刀を弾いて掴み取る。
『初の試みじゃが、この状況は都合がよい、二刀流じゃ神威!』
「おっしゃ!」
オレは地面に足をつけ、真っ直ぐ突っ込んでくる奴の袈裟と逆袈裟の左右から、同時に刀を振り下ろして切りつける。
「『桜花二刀流』」
「GA…」
そして振り下ろした刀を、右斬り上げと左斬り上げで同時にやつの身体をV字に切り上げた。
「『彼岸花2式』」
「Gaa…」
そして男はようやく倒れ、椿は人の姿に戻る。
「ハァハァ…勝った」
「二刀流の使い方もよかったぞ神威」
「そりゃどうも」
なんだかんだで強くなってんだなオレ、少し前のオレならしっぽ巻いて逃げてたぞ。
オレは椿に振り返り、笑顔でこう言った。
「帰るか」
「じゃな」
そして、オレと椿はゆっくりと帰路に着いた。
「それはそうと、雪代先輩との関係をまだ聞けとらんから後でじっくりと訊くからの」
「帰宅後地獄確定!!?」
雪代視点
「凄い…」
私は今、現実では有り得ないものを目撃してしまっていた。
暴走する私のストーカー、そしてその男と戦う神威君。
「連絡先を交換し忘れたから追いかけてきたら、まさかこんな光景を見ることになるなんて」
正直、今でもさっきの光景が信じられない。
神威君、あんなに強かったのね。
そしてもうひとつ……
「かっこいい」
危ないことは分かってる。それでもあれだけ真剣に戦う神威君の姿をかっこいいと思ってしまった。
「正体を知りたいわね。今の仮の恋人関係はむしろ好都合だわ」
フフフ、覚悟して貰うわよ神威君。
夏人視点
「……なるほど」
八九師神威、この男の実力を知る為にあの男に引っ付くように追いかけていた男を利用させてもらったが、
「この程度ならまだ脅威ではないな」
あのやせ細った男はオレが仕組んだ。オレの持つ刀の数本の能力のうちの一つだ。
オレ達の実力なら圧倒できる程度のやつだったが、まさかここまで苦戦するとはな。
「これならオレが動くまでは無いだろう」
オレはその場をゆっくりと離れていった。
「今はそれほどの脅威ではないが、消すならば早い内に…か」
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