第39話 sideB=愛
何故か泣いていたこいつ。おかしい。右目ではこんな場面を見たことがない。
そして、こいつはすぐに笑った。めったに笑わないこいつが、涙を隠すために笑った。
それが妙な違和感を感じた。
しかし、それ以外に特にはなかったので、そのまま二人で帰った。
夕暮れで影が大きく伸びる。
こいつは夕暮れを見ていた。俺は夕暮れによって伸びた影を見たいた。
いつか、こいつとの仲を決別するときが来るだろう。もしも、お互いの仲を深めていった先にあるのは、こいつの不治の病だ。
前世で経験した、あの想いを繰り返すわけにはいかない。
たとえ、こいつが俺以外の誰かと一生共にすることになったとしても、俺は構わない。
極論、あいつがもう二度と不治の病にかからないのならば、俺はいなくなっても良いのだ。
しかし、通過之眼によると、あいつが、申しとかかる可能性が高いらしい。
だから、俺はあいつが不治にの病にならない未来を切り開く。
それが今世の俺の役割だ。
たとえあいつが誰を好きになっても、誰と結ばれても、あいつが前世と同じ最悪の最期を回避できるのならば、それでいい。
あいつが、詩翔雪極の最期を今も通過之眼により、鮮明に思い出せる。
あいつは、最期まで俺のために笑っていた。無理をして、笑っていたんだ。
そのことに、俺は不甲斐なさを感じた。
俺がもっと早くから気をつけておけば、いや、俺という存在ではない、別の存在といればお前は運命が変わっていたのかもしれなかったのに……。
だから、今世は行動を変えた。
側にいて、だけど、いつか別れられるように。
この感情は前世の俺が今世の俺へとくれた『愛』なのだろう。
だから、今日も、俺はあいつの側にいる。
それが、今の俺ができる最大の行為だと想っている。
ただ、いつか別れるだろう、その日まで、俺はあいつの未来を変えてやる。この右目を通して…………。
愛END
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