第34話 11

「よ、伊田」

 教師たちから解放されたとき、もう夕暮れだった。

 だけど、あいつは、詩翔雪極はいた。

「足、大丈夫なん?」

「おう」

「助けてくれて、ありがとうね」

「…………おう」

 俺とあいつを取り巻く環境は変わってしまった。しかし、俺たちは何も変わらない。

 変わらない関係でいたい。

「伊田ってあんなに強かったんだね」

 あいつは俺に向けて、

「ありがとう」

 と、とびっきりの笑顔を見せてくれたんだ。

「…………おう」

 俺はそれに対してぶっきらぼうに応えた。

 本当は俺はズルしている。俺の右目には、前世と今世と来世の自分の行動を見ることができる。

 確かに制限があるが、ある意味予知眼といって良いのだろう。名前は通過之眼(つうかのめ)。

 これで前世で一緒だった俺とこいつの人生を見ることができた。俺とこいつは夫婦だった。そして、前世のこいつは不治の病に侵されてしまった。

 今世でこの右目により、記憶を』思い出した。そして、俺はこいつを救いたいって想った。

 前世の最期で手に入れた右眼により、前世と今世と来世の自分の人生を知ることができる。しかし、それでこいつが今世で救えるのかは分からない。

 全然わからないんだ。

「また、明日もよろしく」

 こいつの未来を切り開くためなら、俺は何度も過去・現在・未来を行き来してやる。

「………………おう」

 そう誓うように応答した。

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