第35話 sideC 0
目の前に一人の男と女がいた。
男の名前は伊田俊紀。
女の名前は詩翔雪極。
二人は恋人同士だった。
二人の仲は他人が胸焼けするくらい甘々で、羨ましいと言われたり、嫉妬するくらいの仲だった。
ただ、あまりにも二人は通じ合っていたために、理解しすぎたのだ。
男は女の痛みと苦しみを。
女は男の寂しさと孤独を。
理解してしまったがゆえに、お互いカバーした。
だからこそ、こんな悲劇が起きてしまった。
女は病に伏してしまったのだ。
それは男と女が結婚して、人生で最も充実していたときに、女は不治の病にかかってしまった。
男は必死に治療法を探した。地球のあらゆる場所に行き、女を活かすために額を地に擦り付けて、懇願した。
しかし、あらゆる治療法を試すも、女には効果が無かった。
女はこう想った。
「私が死んでしまったら、あなたは私を追うのでしょうか?」
女はそれを恐れて、そんな未来を歩んで欲しくなくて、男に頼んだ。
「あなたが生きるためならば、私を忘れて欲しい」
男は否定した。
「君を忘れて生きるくらいなら、俺は死んだ方がましだ」
初めて男と女は夫婦喧嘩した。そして、紙様に頼むことにした。
紙様。
その国では、紙にこそ神が宿るという宗教が存在した。
そして、二人は願った。
男は、
「どんなにうまれれ変わっても、また、あなたと同じ場所にいて、隣でずっと側にいたい」
女は、
「今、この瞬間をずっとずっと、側にいたい。たとえ、この先の未来にあなたと側にいられなくなったとしても…………」
男は、永遠を望み、女は刹那を望みました。
そして、別れの日。
女は死にました。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
男の慟哭は一週間続きました。
男は後を追うつもりでした。しかし、生前の彼女が言っていたことを思い出します。
「死んだら、絶交よ」
その言葉だけが、男と女が交わした最後の約束でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます