第7話 6

 翌日の放課後。

 私と伊田は女子バレー部に来ていた。

「詩翔雪先輩、チワース」

『チワース』

「みんな、こんにちは」

バレー部の練習に混じる。伊田はマネージャーみたいな役割をしている。

「いくよ」

『ハイ』

 私のサーブで上下左右前後を揺さぶる。

「さすが、だわ」

 バレー部の部長、小野優子(おのゆうこ)先輩がうっとりしていた。

「本職の私たちでさえ、戸惑うようなサーブ。なんて美しい攻撃なのかしら」

 はぁ、はぁ、と小野先輩は上気している。

「伊田くん、やはり」

「ダメです」

「…………まだ何も」

「ダメです」

「………………やっぱりちょっとでも」

「ダメです」

「ではこうしましょう。こちらからも何人か部員を送るから、トレードということで」

「絶(対に)拒(む)」

「………………やっぱりダメ?」

「ダメです」

「ちょっとで良いの、ちょっとで」

「ダメです」

「本のちょっとでも良いのよ?」

「ダメです」

「………………(怒)」

「絶対にダメです」

 小野先輩と伊田との間で火花を散らしている。その姿を私は横目で見ていた。

「次行くよ」

『ハイ』

 とにかく、私は無回転サーブを連発したり、ネットインサービスを狙ったりして、女子バレー部の練習に貢献した。そして、伊田と小野先輩は終始火花を散らしていた。

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