第5話 4

 そして、予定日の放課後。

「詩翔雪、今日は吹奏楽部にお客として行くぞ」

「了解、行きますか」

 私と伊田は音楽室へと向かった。

「失礼しまーす」

「きゃー、詩翔雪さんよ!」

 後輩が群がってくる。ちゃっかり紅葉遥(もみじはるか)先輩も混ざっている。その容姿から一年生と間違われても仕方ない。だけど、紅葉先輩は吹奏楽部の部長なのだ。

「紅葉先輩、あなたはこの群れをどうにかする方でしょ?」

「やだな〜。詩翔雪さん。私があなたのファンだってことをお忘れ?」

「そうですよ、先輩。うちの部員の詩翔雪は致命的な欠陥を抱えているんですよ?」

「その欠陥ごと愛おしいと思えるのよう」

 えっへん、と紅葉先輩は胸を張る。

「部長、無い胸を張ったって、意味ないですよ」

「そうそう、部長は吹奏楽部の合法ロリっ娘なんですから」

「これ、誰だ、そんな暴言を吐いた人は!!」

 吹奏楽部の後輩たちに真剣に追い詰める紅葉先輩の姿に、敵に回してはイケナイ人だわ、と私は心のメモにメモった。

「こほん、それでは吹奏楽部さんからの依頼で、お客として来ました。伊田と詩翔雪です。よろしくお願いします」

『よろしくお願いします』

 紅葉先輩の主導のもと、部員を配置似つかせ、そして、演奏を行った。

 吹奏楽の演奏はとても心地よい音色だった。

 そして、当然のように、伊田は寝ていた。

 めっちゃ気持ちよく寝ていたから、

「フン」

 演奏終了後に、拳でガツンと頭に一発かましてやった。

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