第4話 3

「……て、微笑んだの。それだけだよ」

 余里はぽかんと口を開けていた。

 私は何か不都合なことでも言ったのか、と恐る恐る問う。

「何か変なこと言った?」

「ううん、あいつがそんなことを言ったとは、普段の姿からは想像できなくて」

「そうそう、普段はいつも寝てばっかりなのにね」

「そ、そういうことではないんだけど……」

「うん? どういうこと?」

「いや、何でもない」

 おほほほほお、と余里は話題を反らした。

「とにかく、部活部は今度、野球部の応援をしに行ったり、女子バレー部の助っ人として参加したり、吹奏楽部のモチベーションをあげるためにお客さんになったりするのよ」

「吹奏楽部の件は別に部活ではないような気がするけど……」

「他にも水泳部のマネージャーの手伝いしたり、文芸部に作品を寄稿したりするのよ」

「忙しいんだね。うん」

「そう、めっちゃ、忙しい。それなのに、うちの部長は鈍間なんだから」

 私がそう言うと、余里は、

「やっぱりお似合いだわ」

 熱いわと言って、手で扇いだ。

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