第3話 2

「伊田、また寝ているの?」

 部室で机に突っ伏している井田に声をかける。

「詩翔雪か、寝かせてくれよ「

「だ〜め。伊田はここの部長だろ? 部長らしくあれ、だよ」

「実質の部長は詩翔雪だろ〜。全権任せるから、やっておいてくれよ〜」

「ダメよ、ダメダメ。私は副部長」

 伊田は右目を手で擦りながら、書類に目を通した。

「伊田、そういえば、この部、部活部って二人しかいないけど、成り立つのか?」

「う〜ん、部活部っていうけど、実際は他の部活へのヘルパーだから、別に何人いようが構わない。それにここ、非公認だし」

「なら、どうして私をこの部に入れたのよ?」

「お前なら、確かに引くて数多だろうよ。でも、お前が楽しそうに見えなかった。だから、部活部に勧誘したんだ。これならばどの部活に干渉できる。それが部活部の真骨頂だからな」

 伊田は書類を精査し、記入していった。

 私は、伊田に問いかけた。

「どうして、楽しくなさそうって思ったの?」

 伊田はこう答えた。

「お前は小学校のときから周囲から笑わないヤツだと知れ渡っている。だけど、お前が本当に興味があるものや楽しいと思ったことに対しては、雰囲気が全然違う。それに俺は知っている。お前は本当は笑えるんだってことを。そのための部活部だ。

 お前はどの部でも通用する力を持っている。しかし、それゆえに、一つに絞らず、全てやってしまいたいのだろう?」

「まぁ、ね」

「だから、この部を作った。作ったと言っても非公認だけどな。この部ならばお前がどの部活に干渉してもいいように、参加可能にする。また俺がお前の負担を軽減できると考えたから、お前を無理やりにでも入部させたんだよ」

 伊田は、そう言って、微笑んだ。

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